実はこの話は、働き方改革にも通じるテーマである。働き方改革を単に残業時間の削減として捉えると物事の本質を見誤る。諸外国と比べて日本企業の生産性が低いことはよく知られているが、それは業務プロセスが非効率であることに加え、雇用のミスマッチが大きく影響している。
人には適性というものがあり、本人の適性と業務内容が一致しない場合、ムダな作業が増え生産性が低下する(営業に不向きな人と、購買に関する適性のない人が、それぞれの企業で受注、発注業務に従事した場合、1つの案件を実現するまでの時間が大幅に長くなることは自明の理だ)。つまり、生産性を向上させるためには業務プロセスの改善だけでは不十分であり、雇用を最適化することが強く求められるのだ。本人の適性を考えない画一的な職種区分がうまく機能しないのは当然の結果といってよいだろう。
私生活を重視し、給料や仕事はそこそこで良いという人もいれば、昇進を目指して全力で仕事に取り組みたいという人もいる。スペシャリティを極めたい人もいれば、マネジメントに興味のある人もいる。また、想定される業務に対応できる人物とそうでない人物にも分かれてくる。本人の希望と適性がうまく一致して初めて生産性は最大化される。
その意味において、自らのキャリア形成について明確な意思を持ち、企業側の想定とは異なる職種を希望する学生が増えていることは素直に評価してよいだろう。変わるべきなのは企業の価値観である。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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