非電化区間に電車を走らせるといえば、JR東日本が推進したハイブリッド気動車も仲間に入る。ディーゼルエンジンを搭載しているけれど、エンジンの動力をそのまま車輪に伝えない。エンジンで発電機を回し、電気をモーターに送って駆動する。いわば発電機を搭載した電車である。ブレーキ時に発生した電力を蓄電池にためて再利用する機構もついた省エネ車両だ。
JR東日本はさらなる低コストを狙ったか、蓄電池を省いた「電気式気動車」を製造する。JR北海道も採用する予定だ。しかしこれは新しい技術ではない。電気式ディーゼル機関車として、古くから存在した方式である。バッテリーのコストと電力回生で節約できる費用を考えると、バッテリーレスという選択も有効だろう。
こうした流れを追っていくと、興味深い電車が見つかった。京王電鉄が9月から運行を開始した5000系電車だ。ロングシートとクロス(前向き)シートを転換する機構を備えて、2018年から有料座席指定列車も運行するとして話題になった。斬新なデザインと、Wi-Fi、コンセントなど客室設備の充実ぶりが話題になっている。
しかし、注目したいところは床下だ。この電車は、床下機器の少ない車両の空間に蓄電池を搭載している。電車なのに蓄電池。全線電化区間なのに蓄電池。これは、従来は架線に戻していた回生電力を蓄えて使い、省エネルギーを実現するため。また、停電などで駅間に停車したとき、隣の駅まで自力で走行し、乗客を線路上に降ろさずに済ませるためだという。
隣の駅まで、が、どの程度の距離を想定しているかは不明だが、この機構を使えば、高尾線の高尾駅〜高尾山口駅程度は自力で走行できそうだ。それができるなら、5000系の車両数がそろったとき、高尾駅〜高尾山口の架線は撤去しても良いのではないか。車窓から邪魔な架線柱が消える。景観を大切にする会社として京王電鉄の価値も上がりそうだ。
そして、もっと大容量な蓄電池を搭載すれば、駅で充電、本線は架線なしという運用もできるかもしれない。将来は台湾の高雄市のような仕組みで、既存の電化路線の架線は撤去できる。これで架線にまつわる全てのデメリットは解消できる。
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