地域医療の「脱中央集権化」欧州では議論進む(2/7 ページ)

» 2017年12月07日 06時00分 公開
[三原岳ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

人口減少や高齢化に関する違い

 では、都道府県は調整会議でどのような議論を進めるべきだろうか。

 国は各地域で医療機関が担う役割を構想策定時点で明記した青森県の事例(※4)を引き合いに出しつつ、17年10〜12月に「機能ごとに具体的な医療機関名を挙げ、機能分化連携もしくは転換についての決定」、18年1〜3月に「具体的な医療機関名や進捗評価の指標、次年度の基金の活用等を含むとりまとめを行う」という考え方を示しており、この考え方は今年6月に閣議決定された「骨太方針2017」に継承されている(※5)。

 ここで青森県の地域医療構想の内容を確認すると、青森市を含む青森地域では県立中央病院が高度医療や専門医療の提供、青森市民病院が救急医療の確保と回復期の充実を進めると定めた。

 確かに病床再編や医師確保を図るため、都道府県主導で医療機関の役割分担を定めるのは1つの方策であるが、これをすべての都道府県に、しかも2年間で適用するのは必ずしも現実的とは思えない。

 現実的とは思えない理由の第1に、各都道府県で高齢化や人口減少のスピードが異なるため、医療需要に地域差が発生する可能性がある点である。その一例として、図2は10年を100とした場合の高齢者人口の推移見通しであり、かなりの差異が生じることが分かる。

図2 2040年までの都道府県別高齢者人口推移 図2 2040年までの都道府県別高齢者人口推移

 分かりやすい事例で言うと、40年ごろに一気に高齢化が進む首都圏と、人口減少局面に入る青森県では課題の現われ方と解決策は異なる。

※4 厚生労働省幹部が青森県を最初に先進事例として取り上げたのは16年6月の神田裕二厚生労働省医政局長の発言。同年7月6日『CB News』、同年7月1日『メディ・ウオッチ』。

※5 厚生労働省は17年11月20日の会合で、都道府県に対して毎年度、病床再編について「具体的対応方針」をとりまとめるよう求めた。その中では25年時点の役割と医療機能ごとの病床数について合意を得た全医療機関について、(1)25年を見据えた地域で担うべき役割、(2)25年に持つべき医療機能ごとの病床数――を明示する必要があるとしている。

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