地域医療の「脱中央集権化」欧州では議論進む(3/7 ページ)

» 2017年12月07日 06時00分 公開
[三原岳ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

病床を巡る地域ごとの違い

 現実的とは思えない理由の第2に、病床数が都道府県単位で大きく異なる点である。病床が「西高東低」の傾向であることは知られているが、人口1000人当たりで見た病床数の差は図3の通りである。

図3 人口1000人当たりの都道府県別病床数 図3 人口1000人当たりの都道府県別病床数

 人口減少が進む高知県や佐賀県などの病床が多い反面、これから先に高齢化が進む首都圏の病床数は少ないことが分かる。地域医療構想に盛り込まれた病床のギャップを見ても、地域差が顕著である。例えば、341構想区域ごとに現状から25年の必要病床数を差し引くと、261区域で余剰となり、三大都市圏に属する区域を中心に75区域が不足となった(※6)。つまり、区域単位で見ても、余剰または不足の状況が異なるのである。

 さらに、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の各機能について余剰または不足するかを341区域ごとに整理すると、地域差が一層顕著になる。区域ごとに4つの各機能が余剰または不足するかどうかを分析(※7)したのが表2である。この方法だと最大で16通り(その他を入れると17通り)になる計算だが、実際には9通り(その他を入れると10通り)のパターンが出現し、全国的に不足するとされている回復期さえ余剰となる地域が見られた。地域の特性に応じて提供体制を構築する上では、こうした地域差に考慮する必要がある。

表2 構想区域別の病床機能の余剰or不足分布 表2 構想区域別の病床機能の余剰or不足分布

 第3に、青森県の特殊事情を考慮する必要がある。青森県の場合、開設者別に見た医療機関のうち、25%を自治体病院が占めており、都道府県が議論を主導しやすい環境があった。青森県よりも公立病院の割合が小さい岐阜県や三重県、広島県、大分県も同様の手法を採用しており、関係者の意識など別の要因が働いた可能性があるが、青森県のような手法は決して一般的だったとは言えず、これを全国に「横展開」するのは無理がある。

 こうした地域差を踏まえると、地域の現状や将来像、課題に差が大きく、具体的な進め方は関係者と協力・連携しつつ、都道府県が自ら考えていくしかないことになる。つまり、地域の課題は地域で解決する発想が求められる。

※6 残りは±0の島根県隠岐区域、高度急性期を全県単位で比較した石川県4区域の計5区域。

※7 この方法では、病床が1つでも上回ると「余剰」、1つでも下回ると「不足」と整理するため、その規模感を把握できない欠点があるが、各地域で事情が異なる中、一定のルールで大まかな傾向を理解できるメリットもある。

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