小田急ロマンスカー「GSE」が映す、観光の新時代杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2017年12月08日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

LSE引退は2018年度初め。それまでは「いろいろあって楽しいでしょ」

 小田急電鉄は2018年3月にダイヤ改正を実施し、長大な複々線区間を活用した増発と優等列車のスピードアップを実施する。ロマンスカーも観光用、通勤用のどちらも増便する。増便するためには車両が必要だ。ならば、箱根観光用にVSEの増備、通勤特急用にMSEの増備でもよかった。

 他社を見れば、京成電鉄はスカイライナーの車両は全て新型に置き換えている。西武鉄道もレッドアローからニューレッドアローに全て統一し、次の新型車両の導入を告知している。車両の統一はサービスレベルの統一であり、車両の保守の面で都合がいい。東海道新幹線も形式は異なるとはいえ、座席配置は同じで効率よく運用している。

 しかし、小田急はロマンスカーの形式を統一しない。今回は新たにGSEを2本導入する。3本目の予定はないという。いままでの小田急のやり方なら、3本目は作らず、新たなコンセプトで新形式を2本作るとなるだろう。定員も座席配置も異なるかもしれない。手間のかかることをやっている。

 小田急社長いわく「GSEの2本目の導入時期は、工数の都合もあるとはいえ、わざとずらした。GSEの2本目は2018年度第1四半期の早めに入れる。その間、LSEとGSEが並ぶ様子を見ていただける」。つまり、「GSEの2本目と引き換えにLSEは引退」だ。「LSE、EXE、VSE、MSE、GSE、5種類のロマンスカーの競演を、短い間とはいえ、鉄道ファンの皆さんに楽しんでいただきたい」。VSEも2本導入し、製造時期は少しずれているとはいえ、運用開始日は同じだった。今回は運用開始日も変えた。鉄道ファンに人気のLSEについて、引退の花道を作ってくれたらしい。

photo 小田急電鉄社長、星野晃司氏
photo 70000形を担当した建築家、岡部憲明氏。パリ・ポンピドゥーセンターの設計に関わり、関西国際空港旅客ターミナルビルで日本建築学会作品賞を受賞。小田急電鉄ではVSE、MSE。箱根登山鉄道ではアレグラ号を設計した

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