中国で話題の「鬼ごっこ」が、世界中に広まるかもしれない世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2017年12月21日 07時31分 公開
[山田敏弘ITmedia]

監視システムの広がりに懸念の声

監視システムの広がりに懸念の声も(写真と本文は関係ありません)

 こうした監視システムの広がりには懸念も聞かれる。中国はこれらのテクノロジーとは別に、2020年までに「社会信用システム」なるものを構築しようとしている。このシステムは、人民の社会行動や金融行動などデジタルの記録を集め、違法行為などがあれば個人の信用度を減点するというものだ。そうしたデータから個人を信用スコアで格付けするとんでもないシステムだ。もちろん当局が監視するインターネットでの動きなどもすべて数珠つなぎのようにつながれば、壮大な管理システムになる。

 そしてそれが実現すれば、当局は、監視カメラの顔認識で見つけた個人についての、文字通り「すべて」が直ちに分かるようになる。プライバシーもあったもんじゃない。

 強権的な監視国家の中国は、こうしたシステムを徹底的に活用することになるだろう。中国には独立した裁判所もプライバシー保護もないという批判もあるし、政府の人権意識も希薄だ。冒頭のBBCのドキュメンタリーで指摘している通り、当局にしてみれば、「隠すことがないなら、監視カメラなどの監視も恐れる必要はない」ということだ。

 ところで、冒頭の「BBC」対「貴陽市警察」の「鬼ごっこ」は一体どんな結末を迎えたのか。

 市の中心部から外れた場所で下車したBBCの記者は、バスターミナルに向かって歩き出し、小型カメラで自らを撮影しながら徒歩で移動する。その途中で3台の監視カメラに気が付くが、そのまま歩を進め、ターミナルに到着する。すると、直ちに警察署の監視システムが記者を捕捉。警察側のモニター画面には「相似度:88%」という文字とともに、記者の氏名などが表示された。

 次の瞬間、記者は近くにいた警察と警備員に取り囲まれた。記者は「この人たちは実験だとは思ってないな」と漏らす。

 実験スタートからターミナルで発見されるまで、その時間はわずか7分だった。

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