社長交代のヤフー、宮坂・川邊両氏が明かした「目的と舞台裏」データに強い会社に変える

» 2018年01月24日 18時12分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「就任から6年で、ヤフーをスマホとEC(インターネット通販)に強い会社へと変えた。当社はそろそろ“新たな山”を登る時期。新たなリーダーが必要だ」――1月24日に今年6月中の退任を発表した、ヤフーの宮坂学社長は記者会見でこう話した。

 その後を継ぐのは、現副社長の川邊健太郎氏だ。川邊氏によると、“新たな山”とは「ヤフーをデータに強い会社に変えること」。2017年9月時点で4158万ものMAU(月間アクティブユーザー数)を誇る「Yahoo!JAPAN ID」のユーザー基盤を生かし、既存事業を加速していく方針だ。

photo 宮坂学氏(=左)、川邊健太郎氏(=右)

 詳細は伏せられたが、会見では(1)「Yahoo!ショッピング」利用者に提供する商品レコメンドの精度を高める、(2)Web広告におけるターゲティングの精度を高める、(3)他社のデータ活用を支援する――などの方針を明らかにした。

 川邊氏は、データに着目した理由を「国内市場におけるデータ量で(Apple、Amazon、日本マイクロソフトなどの)“テックジャイアント”に対抗できると判断したため」と説明。大企業との競合に屈さず、市場での存在感をさらに高めていく考えだ。

 ネットオークションの代名詞「ヤフオク!」が「メルカリ」など新興勢力に押されているように、「大企業だけでなく、気鋭のベンチャーからも突き上げを受けている」と危機感をあらわにし、「組織力を武器にして戦いたい」(川邊氏)と決意を新たにした。

photo 「ヤフオク!」はメルカリに押されている

新体制は“ネットネイティブ世代”

 川邊氏は現在43歳。社長就任時の宮坂氏よりも1歳若い。新執行体制では、メディアグループ長の宮澤弦氏(36)を常務執行役員に迎えるなど若手を積極起用し、組織の新陳代謝を図る。

 「われわれは、社会に出た時からネットを使いこなしてきた“インターネットネイティブ世代”。誰よりもネットを熟知しているのが、新チーム最大の強みだ」(川邊氏)

 宮坂氏は退任後、1月18日に設立した新会社「Zコーポレーション」の代表取締役に就任する。ネーミングの由来は「Y!の次という意味で、Z」とのこと。

 資本金50万円とスモールスタートでのチャレンジとなる。「事業の詳細はまだ固まっていないが、ヤフーの事業と切り離した新領域を探索していきたい」(宮坂氏)とした。

川邊氏を次期社長に選んだワケは?

 宮坂氏は、12年の社長就任時、前任の故・井上雅博氏から「次の社長を育てるのが、社長のあるべき姿だ」との言葉を掛けられ、6年間の社長業の期間中、後任の育成・選定を常に意識してきたという。

 川邊氏を次期社長に選んだのは「10年以上仕事を共にする中で、多少強引でも物事を進める『思い切りの良さ』を魅力に感じた。メディア・広告事業と、EC事業の両方で責任者を務めた経験もあり、最適の人物だと判断した」と説明する。

 「ベテランが成功体験にしがみつき、若い人が重要なポジションに就けないようでは企業は育たない。ベテランである私は、失敗リスクの大きな新事業に取り組む。新体制下では、私が取り組んできたことの“棚卸し”も進めてほしい」(宮坂氏)

photo 会見での宮坂・川邊両氏

 社長交代の意向を直接伝えたのは、昨年11月。宮坂氏の誕生日に東京・六本木で食事を共にした時だという。宮坂氏は「悩みや葛藤がゼロだったわけではないが、“やったらいいじゃん”とライトに告げた」と明かす。

社員一丸でビジネスを推進

 宮坂氏からバトンを受け継いだ川邊氏は、「それぞれの立場で努力する人は、 何物にも代えがたい国の宝である」を意味する「一隅(いちぐう)を照らす、これ則ち(すなわち)国の宝なり」という言葉を大切にしているという。

 川邊氏は「さまざまな立場で活躍する社員を大切にし、一丸となってビジネスに取り組んでいきたい」と意気込んだ。

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