果たして8Kは普及するのか? 国内電機メーカーに温度差積極派のシャープに対し……(1/5 ページ)

» 2018年01月25日 06時30分 公開
[大河原克行ITmedia]

 8Kの実用放送であるNHK スーパーハイビジョン(SHV) 8Kチャンネルが、2018年12月1日からスタートする。

 4Kの普及がまだこれからという段階ではあるが、年内には8Kが一般家庭でも視聴できる環境が整うというわけだ。

 だが、8Kに対する国内電機メーカー各社の足並みはそろっていない。それは、年初に米国・ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジーイベント「CES 2018」でも垣間見られた。

CES 2018でシャープが展示した27型8Kディスプレイ CES 2018でシャープが展示した27型8Kディスプレイ

3月までに1000台以上売る!

 8Kに最も積極的なのは、シャープだ。

 現在、同社が取り組んでいる中期経営計画において、「8Kエコシステム」の構築と推進を、重点事業領域の1つに掲げていることからもそれが分かる。映像を生成する「カメラ・編集システム」、映像を伝送する「通信・放送インフラ」、映像を映し出す「表示機器」の3つの観点から、8Kエコシステムの構築に取り組み、それを実現する形で、2017年12月には、液晶テレビ「AQUOS 8K」を日本国内で発売。市場想定価格は、100万円前後(税別)と高額ながら、18年3月までに1000台以上の販売を目指している。

 実用放送開始まで1年というタイミングで販売を開始した今回の年末商戦では、主要量販店で、AQUOS 8Kを展示して、8Kならでの画質を訴求。さらに、デビューキャンペーン「シャープ8Kテレビ誕生祭」を実施し、8Kテレビ以外の液晶テレビを購入しても、ギフトカタログをプレゼントするという手法で、8Kを盛り上げてみせた。

 さらに、ビジネス領域での展開にも力を注いでいる。医療分野では、8K内視鏡システムとしての活用を開始。工業分野では、精密機器の生産現場で微細な傷を発見する検査システムで8Kを活用し、シャープの国内工場へも導入する。また、農業分野では、害虫駆除や農作物の生育管理システムを構築し、美術館や博物館向けには、展示物と8K映像のコラボレーションにより、展示物に関する理解をより深める提案をしているという。そのほかにも、警備やインフラ保守、パブリックビューイングでのスポーツ観戦、教育など、幅広い分野で8Kを活用した提案を開始しているところだ。

8Kカムコーダー 8Kカムコーダー

 シャープの戴正呉社長は、「AI(人工知能)やビッグデータ、さらには関連パートナーが持つ技術などを組み合わせて、8Kエコシステムを実現するさまざまな革新的なソリューションを創出することに取り組んでいく」としている。

 シャープは、大阪府堺市の堺ディスプレイプロダクトで、8K対応の液晶パネルを生産しているという強みも、同社が8Kビジネスを加速する理由の1つだ。17年度下期には、8Kエコシステム構築に向けた技術開発に、事業本部の経費とは別枠となる約47億円の社長ファンドを充当することも発表している。そして、20年度には、シャープが販売する60型以上のテレビの半数以上を8Kテレビにする意欲的な目標も打ち出している。

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