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「仮想通貨はバブルなのか」という議論は不毛だ“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)

» 2018年01月31日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格が乱高下していることや、国内の取引所で大規模なハッキング事件が発生したことから、仮想通貨を巡る議論が白熱している。

 相場が過熱しているのは間違いないが、筆者は現時点において仮想通貨がバブルかどうかを判断するのはナンセンスだと思っている。むしろ仮想通貨に今後、どのような利用形態があり得るのか(またはないのか)について議論した方が建設的だろう。今回は、仮想通貨に関する論点整理を行い、その上で妥当な価格水準はいくらなのか模索していく。また後編(次週)では最近話題のICO(イニシャル・コイン・オファーリング)の潜在力についても考察する。

photo 仮想通貨の利用形態について考察

将来の価格について断定的に議論するのは無意味

 ビットコインは2017年末から急激な上昇を開始し、一時、1ビットコイン=220万円を突破。その後は乱高下を繰り返しており、現在は120万円程度で取引されている。

 バブルというのは非常に情緒的な言葉であり、人によって解釈はさまざまだが、一般的には、その商品が持つ本質的な価値を大きく超えて取引が行われる状態のことを指している。だが仮想通貨の本質的価値がいくらなのかについて断定できる人は、現時点では誰もいない。従って今の価格がバブルかどうかを判断する手段は理屈の上では存在しないことになる。

 1900年代初頭、自動車の本格的な生産が始まったころ、自動車が今のように普及するのかは誰にも分からなかった。だが自動車は画期的なテクノロジーであるとして一部からは熱狂的に支持され、GM(ゼネラルモーターズ)の株価は一時、200倍に高騰した(今のビットコインも真っ青である)。半導体大手の米Intelも、上場時との比較では一時、1000倍以上に株価が上昇している。

 結果として自動車もPCも驚異的な普及を果たしたので(あくまで結果論だが)、両者の株価はバブルではなかった。一方、1600年代にオランダで発生したチューリップバブルはその価値に根拠がないことが分かり、一気に崩壊へ向かった。

 チューリップバブルの時も世間から激しい批判が寄せらたし、GMの株価についても同様であった。何を言いたいのかというと、将来の期待によって市場が加熱している時には、その後、価格がどう推移するのかについて正確に予測することは不可能ということである。私たちは予言者ではないので、将来の価格について断定的に議論するのは無意味である。

 筆者は先ほど、本質的価値がいくらなのか分からないと述べたが、推測するためのヒントはある。多くの人が論理的な推測を重ねることで市場のコンセンサスが得られていくはずだ。これについては後ほど説明したい。

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