このところ、中央銀行がブロックチェーンを使った仮想通貨を発行すれば、ビットコインなど既存の仮想通貨は駆逐されてしまうという議論を目にする機会が増えた。中央銀行にとって仮想通貨が厄介で好ましくない存在であることは事実だが、この話も少しポイントがズレている。
仮想通貨は「電子的な貨幣」といった部分だけに着目されているわけではなく、むしろ、政府による一元管理を必要としない点が重要視されている。従って中央銀行が紙の紙幣に代わってブロックチェーンの貨幣を発行したところで、ビットコインをはじめとする無国籍通貨との関係は変わらない。
そもそも中央銀行は現段階において、紙の紙幣はほとんど発行していない。ここ数年、日銀の量的緩和策で日銀当座預金には300兆円を超える資金が積み上がっているが、これは全て電子的な振り込みである。ブロックチェーンという低コストな新技術を使っていないだけで、中央銀行が発行する通貨のほとんどは電子的だ。
中央銀行が全ての通貨をブロックチェーン化し、銀行を通さずに直接管理することも原理的には不可能ではないだろう。経済学の分野におけるマネタリズムを主張する人にとっては大喜びかもしれないが、銀行を使って間接的に金融をコントロールする現行制度は中央銀行にとって居心地がよい。ここから大きく踏み出すとなると、かなりの紆余曲折(うよきょくせつ)が予想される。
貨幣というのは、多くの人が通用価値があると判断すれば、貨幣として流通する性質を持っている。ビットコインと中央銀行の関係について議論するに当たっては、政府の管理下にない通貨がどの程度、流通できるのかという部分に論点を絞った方がよいだろう。
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