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「仮想通貨はバブルなのか」という議論は不毛だ“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)

» 2018年01月31日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

ビットコインの利用価値

 一部のコスモポリタン(世界主義者)は、ビットコインに代表される無国籍な仮想通貨が世界を行き交う社会を望んでいるかもしれない。だが現実的に仮想通貨がドルや円といった法定通貨に代わってメジャーな存在になるというシナリオは少々考えづらい。従って仮想通貨は、本格的に流通したとしてもマイナー通貨であり続ける可能性が高いだろう。

 ではマイナー通貨としてのビットコインの利用価値はどこにあるのだろうか。おそらくは、国際的な少額決済手段として使われるか、危機が発生した時の資産保全手段のどちらか、あるいはその両方ということになるだろう(もう1つの利用形態としてベンチャービジネスの資金調達というものがあるがこれは次回のコラムで解説する)。

 現時点では価格の上昇期待が高いので決済手段として使われないのは当然のことだが、価格が安定してくれば、国際的な少額決済手段として活用され始める可能性はある。

 資産保全については既にその役割を担い始めている。中国人がビットコインを好んで使う理由の1つは資産の保全だが、非民主国家の国民など、自国の制度が信用できない人々にとってビットコインは有力な資産セクターの1つとなりつつある。キプロスが金融危機を起こした時や、ベネズエラが経済危機を起こした時も、ビットコインに資産を移す現象が見られた。

 こうしたニーズが今後も継続的に存在すると仮定した場合、全世界のマネーの0.1%程度というレベルであれば、仮想通貨が存在する余地があると判断するのはそれほど非現実的なことではないだろう。人によっては1%程度でもおかしくないと考えるかもしれない。

 仮想通貨の使途について議論する際には、取りあえず、こうしたマイナーでニッチな使い道があり得るのかという部分にフォーカスした方がよい。両極端な話をぶつけても議論は平行線になるばかりだ。

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