旅行会社が開催した「鉄道好き企画旅行」のコンテスト「鉄旅オブザイヤー2017」の授賞式が開催された。受賞作品はもちろん良作ばかり。今回は審査員を務めた筆者の視点で、受賞しなかった優秀作も紹介したい。
2017年、最も評価された鉄道企画旅行は貨物線ツアーだった。一般公募部門はゲームのような山陰本線の旅だ。他にも楽しい鉄道旅行がたくさんあった。
鉄旅オブザイヤーとは、国内の優れた鉄道旅行商品を表彰し、鉄道旅行の魅力を発信する目的で創設された。11年から数えて7回目になる。主催は鉄旅オブザイヤー実行委員会、委員は鉄道旅客協会となっている。鉄道旅客協会とはJR乗車券の委託販売業者の団体で、会員は国内の旅行会社だ。内輪の品評会にならないように、という趣旨か、13人の外部審査員も審査に加わる。私もその1人。
審査中に、たくさんの気付きをいただいた。特に今回は「旅の付加価値とは何か」「良い商品を作るためには、手間を惜しんではいけない」という教訓をいただいた気がする。まずは受賞作品から紹介しよう。
『通常は運行していない貨物線も走行! 〜お座敷列車「宴」利用 東京・神奈川・千葉の1都2県貸し切り列車でぐるり周遊・日帰りの旅』(クラブツーリズム)
池袋発、品川着の日帰りツアー。お座敷車両に7時間乗りっぱなし。下車観光はなし。列車に乗って、ひたすら景色を眺めるだけ。鉄道ファンしか理解できないツアーだ。
ルートは池袋→大崎→新木場→誉田→新小岩操車場→松戸→田端操車場→新鶴見操車場→逗子→新鶴見操車場→品川。タイトルにある通り、通常は旅客列車が運行しない「新金貨物線」「常磐貨物線」「東海道貨物線」「高島貨物線」をルートに組み込んだ。
貨物線ツアーはこれまでにもいくつかあった。しかし、この企画のポイントは他にもある。りんかい線で新木場駅に行き、そのまま京葉線に入る。これは千葉県知事が熱望しているにもかかわらず、運賃精算の問題があって実現しないルートだ。現在は団体貸し切り列車だから乗れる区間といえる。
担当者は、社内で鉄道好き以外の人に理解されず苦戦したという。JRやりんかい線との交渉も手間がかかったことだろうし、その手間に対して2万2000円の値付けも苦慮したと思う。実際には完売の上、600人のキャンセル待ちになるという大成功となった。
クラブツーリズムは会員制を採用しており、おそらく「鉄道好き」の顧客データを持っている。自社の顧客の志向や旅行予算などを分析、把握しているからこそ、社内を説得できたといえる。こうした鉄道企画が話題になり評価されると、「鉄道旅行好き」な新会員の獲得にもつながる。
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