博士号を取得した若手研究者の52.2%が就職から3年半経過しても「任期付き」の不安定な雇用形態で勤務していることが文部科学省の調査で分かった。
任期制の研究者の66.9%が「研究者として安定的なポジションを得たい」と考えており、若い世代ほどその志向が強い。一方、大学教員などの安定したポストに就けず、研究室などで任期付きの研究員を務めるいわゆる「ポスドク」が若年層を中心に増加しているのが現状だ。
文科省によると、「大学の経営状況が悪化していることや、研究者が高齢化したため人件費が高くなったことで若手研究者へのポストを用意する余裕がなくなっている」という。
大学内のポストだけではなく、企業の受け入れが他国と比べて厳しいのも課題だ。例えば、米国では10%を超える企業が研究者を受け入れているが、日本では4.6%にとどまっている(2012年時点)。また、日本の研究者の転職先は民間企業よりも個人事業主や非営利団体に行く比率が多かった。受け皿(選択肢)が十分に用意されていないために、安定した環境で研究を続けることが難しくなっている。
受け入れが難しい理由については、企業の約半数が「特定の専門知識を自社で活用することができないから」と回答した。
同省は「大学側は企業と共同研究をする機会を増やすなど、企業のニーズに合った研究を進めていく努力も必要だ。企業とのマッチングを支援し、受け入れが進めば、ポスドクの数も減る」と話す。
「さまざまな選択肢を用意することで、若手研究者が安定してキャリアを築いて行けるように改善していく必要がある」(同)
また、15年度に大学院の博士課程を修了した人(社会人と留学生を除く4922人の回答者)の6割以上に奨学金などの借入金があり、その大半が300万円以上を借り入れていたことも分かった。同省は今後、借入金が進路に与えた影響を分析するとしている。
調査は、2012年度に博士課程を修了した2614人の回答をまとめた。
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