なぜ中日ドラゴンズは松坂大輔を「救世主」として獲得したのか赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)

» 2018年03月23日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

単なる「客寄せパンダ」ではない

 もちろん球団は単なる「客寄せパンダ」として松坂を終わらせるつもりは毛頭ない。最初に獲得を進言したとされている現場トップの森繁和監督、フロントで国際渉外担当を務める「デニー」こと友利結氏は、松坂が西武ライオンズ時代にそれぞれ投手コーチ、仲のいい兄貴分の先輩投手だった関係もあって、今もじっこんの仲だ。その両者が松坂再生の指南役となって、ホークス時代の失敗は繰り返さないように、厳しい目を光らせながら一軍の戦力となるべく調整させている。

 すでに森監督は、友利氏らの情報をもとに、松坂が長きに渡って悩まされていた右肩痛の原因が判明してようやく完治に至り、ここ数年と比較してコンディションが格段に向上したことも確認。5回100球メドの内容ならば、一軍のマウンドで先発ローテーション入りが可能とみている。

 ホークスでは投手陣が飽和状態で、よほど抜きん出た実力がなければ一軍メンバー入りなど夢のまた夢だった。しかしドラゴンズでのハードルは正直低い。チームが苦しい戦力事情に悩まされている背景もあって、ある程度の難点が浮き彫りになったとしても、目をつぶって一軍のマウンドに送り出される可能性が高いだろう。育成からトップまでハイレベルな選手層で固められているホークスでは互いの競争意識が強く、時にいい意味でチーム内にギスギスしたムードを生んでいる。

 一方のドラゴンズには森監督の方針も手伝って、“鉄の結束を貫き、締めるところは締める”という映画「ゴッドファーザー」を連想させるような、どこかマフィアのファミリー的な気質がチーム内に漂う。チーム入団と同時に松坂が選手たちから大歓迎され、まるで昔から中日でプレーしているかのようにスーッと溶け込んでいけているのも森監督や友利氏としては想像通りの展開だったといえるだろう。

 「ドラゴンズに来てファミリーの一員となれば、松坂は溶け込みやすいとすぐに感じるだろうし、ホークスのようにギスギスする中において過剰な形で周りに気を使いすぎてしまうこともない――」。森監督も友利氏もそのように考えて、ドラゴンズならばやりやすい環境の下で必ず「怪物復活」を成し遂げ、結果を残せるに違いないと踏んでいるのである。

photo オープン戦の登板が大きな話題になっている(出典:中日ドラゴンズのFacebookページ)

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