日本政府1000億円を宇宙ビジネスに投入、勝機は?宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2018年03月24日 08時30分 公開
前のページへ 1|2       

サウジアラビアやルクセンブルクも

 打ち上げサービスだけではない。30年までに石油依存型経済から脱却し、投資収益と知識集約型産業に基づく国家建設を目指しているサウジアラビアは、政府系ファンドが宇宙旅行サービスを目指す米Virigin Galacticに10億ドルの投資を行った。将来的に宇宙エンタテイメント産業を構築することも視野に入れる。

 また、本コラムでも紹介したルクセンブルクが掲げるテーマは、宇宙空間における商業的な宇宙資源開発だ。「SpaceResources.lu」という名のイニシアチブの下で、既に巨額のリスクマネー供給、法整備、規制環境などを整えて企業誘致を積極的に展開中だ。18年には同国初となる宇宙機関の創設を計画している。

 17年末にはルクセンブルクで欧州初となる民間宇宙ビジネスをテーマにした大規模カンファレンスが開催されたが、米SpaceXでイーロン・マスクCEOを支えるグウィン・ショットウェル社長がわざわざ会場に駆けつけるなど、同国の動きには多くの関係者が注目している。

日本からメガベンチャーは生まれるか?

 日本には現在20〜30の宇宙ベンチャー企業があると言われているが、米国などと比較するとまだまだ少ないのが現状であり、1,000億円規模のリスクマネー供給拡大によりプレイヤー数が増えることが期待される。また、同時に期待されるのが世界で勝てるメガベンチャーの誕生だろう。世界では時価総額が1000億円を超えるといわれるベンチャーも誕生している。激化する世界の宇宙ビジネスにおいて勝てる領域を見極め、日本発のメガベンチャーが生まれることを期待したい。

 他方で、日本では従来宇宙と関係に薄かったさまざまな業種の企業が宇宙ビジネスに興味を示し始めている。今回発表されたS-Matchingの初期メンバーにも多種多様な企業が名前を連ねている。こうした企業の多くはグローバルに事業展開しており、投資をする側に回るケースもあれば、自ら事業を行ったり、技術提供を行ったり、あるいは顧客としてサービスを購入するなど、多様なかかわりの可能性がある。こうした広がりを産業力へと昇華できるかが今後の大きな課題だ。

 最後に、少し紹介させてほしい。筆者自身が2015年から主催をしている宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2018」が5月10日に開催される。3回目となる今回は「宇宙ビジネスの広がりがあらゆる産業を巻き込む」と題して、30人以上の登壇者を招いて5つのパネル、3つのスピーチおよびスタートアップピッチを行う予定だ。宇宙ビジネスに興味のある多様な方々にお越しいただければ幸いだ。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.