ビジネスパーソンの強い味方!総務のナゾに迫る

老舗メーカーが“ポップス”社歌をつくったワケあのアーティストが歌いそう(2/4 ページ)

» 2018年03月27日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

1曲丸ごと作った社員も

 歌詞のフレーズは、想定よりもたくさん集まった。アルギン酸の原料の海藻をイメージする「海の恵み」、会社スローガンである「ベスト・イン・ザ・ワールド」、アルギン酸の研究開発に成功した創業者を敬う「羅針盤さえもない旅路」、アルギン酸の特徴から「粘り強く」――など。全社員の半数程度となる50〜60人が参加してくれた。

 なかでも笠原社長の印象に残ったのは、大手メーカーを定年退職後に入社した、ベテラン作業員たちからの応募だ。「社内コミュニケーションとなると、古くからいる人が中心になりがち。ですが、普段はあまり交流できていない人たちからの応募もたくさんありました。現場では遠慮して口出ししづらくても、歌詞のフレーズなら出してみようという気持ちになってくれたのでは」と、笠原社長はうれしそうに語る。

 さらに笠原社長を驚かせたのは、歌詞と曲の両方を考え、1曲全部作ってきた社員が2人もいたことだ。1人は、若いころにバンド活動をしていたという50代社員、もう1人は趣味でバンドを組んでいる30代社員。「まさか、全部作ってくれるとは……」と笠原社長は舌を巻く。社員の意外な一面を知ることになった。

 このようにたくさんのアイデアや思いが集まってくると、うれしい半面、困ったことが起きた。できるだけ意見を反映させた歌詞を作ろうとすると、全くまとまらないのだ。「集まったフレーズをちりばめて歌詞を作ろうとしたのですが、何が言いたいのか分からない、不自然な歌詞になってしまいました。最も大切なことを伝えるため、フレーズを絞り込まざるを得ませんでした」

 その反省を踏まえ、歌詞を実際に作っていくプロセスからは、プロジェクトに関わる人数を最低限にとどめて、進めやすくした。それでも伝えたいことが1曲に収まらず、制作会社からの提案で2曲作ることに。創業者の功績を振り返る「社歌」と、品質へのこだわりがテーマの「スピリットソング」の2曲に落ち着いた。

 「『自分の意見が反映されていない』と思う人がいるかもしれない。そう思うと、心苦しいです。参加してくれた社員には、その証として、何かプレゼントできればと考えています」(笠原社長)

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