若者の「内向き志向」は本当か?人生の選択肢を(1/2 ページ)

» 2018年04月11日 07時30分 公開
[平賀富一ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

 日本の若者について、内向き志向で海外への関心や興味が少ないなどと評されることが多い。この点に関し、毎年継続的に実施されている産業能率大学の直近の調査(2017年「第7回 新入社員のグローバル意識調査」)でも、新入社員の60.4%が「海外で働きたいとは思わない」との回答をしているとの結果が示されている。

 この点に関連し、複数の大学で、国際経営に関連する科目の講義を担当している筆者自身の経験を申し上げたい。当初は、そのような科目を履修する受講生の多くは、海外の事象に関心や興味を持っている受講生が多いものと思っていたが、毎年、最初の授業で、「海外で働きたい人は?」と質問すると、消極的な反応の人が多いことに驚かされる。

 加えて、筆者は、高校でも、「総合的な学習の時間」の特別授業として、上記の大学の講義のエッセンスのような授業も行っているが、そこでも、受講生の海外留学や海外勤務に対する反応は消極的なものが多い。

若者は海外留学や海外勤務に対して消極的というが……(写真はイメージです) 若者は海外留学や海外勤務に対して消極的というが……(写真はイメージです)

 しかし、大学で講義回数が進み、日本の世界・アジアでのポジションや変化、アジア諸国の発展ぶり、グローバルな環境下での日本の若者のチャンスといった話を聞くにつれて、次第に受講生の考えは大きく変化してくる。最終講義が近づくころには、「もっと早く高校生のときに、このような話を聞きたかった、そうすれば、海外への留学や、語学の勉強とか、もっといろいろなことにより熱心に取り組めたと思う」との感想が増える。

 実際に、卒業してしばらくしてから、インドネシアやベトナムなどで起業したいので相談に乗ってほしいという複数の卒業生と面談する機会もある。高校の場合も、上記の特別授業が気付きや動機付け(モチベーション)や意欲を感じる契機になり、大学に進んで海外留学したり、グローバルな事業展開を行う企業に就職するという事例の増加につながっている。このように考えると、日本の若者が内向きというのは、そもそも、海外やグローバルな知識、視点を伝えていなかったり、そのようなことを真剣に考える機会が少ないことが、大きな理由なのではないかと推量される。

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