“相撲界のドン・キホーテ”を気取った貴乃花親方の誤算赤坂8丁目発 スポーツ246(3/5 ページ)

» 2018年04月13日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

「続・貴乃花の乱」を切望していたが

 特に横綱白鵬は暴行事件が発覚した直後、昨年11月の九州場所で歴代最多40回の最多優勝を飾ったことを追い風に観客へ万歳三唱を求めるなど、まるで開き直ったかのような悪態がネットユーザーから猛反発を食らい、それまで築き上げた最強力士としての権威は完全に失墜。逆に貴乃花親方は協会に楯突いた上に、モンゴル人力士たちの馴れ合いの場こそが自分の弟子の不幸を招いた巣窟となったことを暗に指摘し、世間から大きな支持を得た。

 反則まがいのかち上げを使うなど汚い手口ばかりで勝つ白鵬はプライベートでも暴力を振るう。また八角理事長をはじめとする協会の現執行部は密室にこもって自分たちに都合の悪いことは隠ぺい工作を図り、悪巧みに終始する。

 そんな印象を世の中に植え付けることに成功した貴乃花親方は目障りな“悪者”たちを次々とイメージダウンに追い込み、さぞや気分が良かったに違いない。おそらく本人もドン・キホーテ(空想的理想主義者のこと)を気取っていたところがあったはずだ。

 2018年2月の理事候補選挙に「勝ち目はない」と言われながら出馬した際も「(無投票ではなくきちんと選挙を行って)投票をしていただくということが相撲協会の活力になると私たち(一門の間で)は話していた」と自らの立候補こそが、これまでの協会の密室政治に風穴を開けることにつながると主張していたことからも、その姿勢は十分にうかがえる。

 難攻不落の巨大組織に正義の旗を振りかざしながら、たった1人で立ち向かう。そんな貴乃花親方の行動に多くの人が期待し、応援した。ネット上でも「理事にはなれなかったが、きっと何かまた改革をぶち上げてやってくれるはず」「このまま八角理事長の軍門に下って終わるような人物じゃない」などと「続・貴乃花の乱」を切望するような書き込みが散見されていた。

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