“相撲界のドン・キホーテ”を気取った貴乃花親方の誤算赤坂8丁目発 スポーツ246(5/5 ページ)

» 2018年04月13日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]
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相撲協会に天才的なブレーンがいる

 貴乃花親方は飼い犬に手をかまれたというよりも、個人的に言わせてもらえば「因果応報」だと思う。ドン・キホーテを気取っていた割には一番に目を配らなければならない足元のことすら見落とし、先々を見据えた行動にも走れず、ただ暴走するだけで相撲協会を発展的に改革することができない人だったからだ。本気で改革を訴えたいならば、まずは自らが率いる部屋の規律をただした上で、もっと建設的に相撲協会の“倒幕”に乗り出さなければいけない。

 貴乃花の乱は弟子が暴力事件に巻き込まれたことによって幕が切って落とされたが、よくよく考えてみると、貴乃花親方が執行部との話し合いを避けて、警察へ被害届を出しただけのことだったのではないのか――。今となっては、このように疑問の目を向けられても仕方があるまい。

 これでは残念ながらレベルの低い「騒動師」と何ら変わりはない。期待し過ぎた自分が正直言ってバカだった。せっかく貴乃花親方が密室政治の日本相撲協会に風穴を開け、ムーブメントを巻き起こしてくれると期待した世の中の人たちも、これでは一緒になって振り上げかけた拳を一体どこに振り下ろしていいか分からなくなってしまう。そういう意味でも、貴乃花親方の中途半端に終わった決起は責任が重いと指摘せざるを得ない。

 念のために誤解しないでほしいが、筆者は別に日本相撲協会の現体制に肩入れしているわけでない。同協会にいまだはびこる暴力行為の隠ぺい体質は一掃されなければいけないし、ここまで同じことを繰り返し続けている負の連鎖にあらためて歯止めをかける意味でも現執行部は何らかの一手を施さなければならないと思う。よくちまたで「八角理事長は辞任せよ」「白鵬も辞めろ」などという、やや無責任な声が叫ばれているが、仮にそれらが断行されただけでは根本的な解決につながらない。

 「日本相撲協会には天才的なブレーンがいる。貴乃花親方も見事にそのブレーンの用意したシナリオ通り、術中にハマって見事に最後は『悪者』になって政権闘争に敗れた」といったウワサも聞こえてきている。もし相撲協会に有能なブレーンが実在するならば、どうか“今そこにある危機”から大相撲を救ってほしい。そう切に願う。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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