4月上旬、半導体大手ルネサス エレクトロニクス子会社の工場(山形県米沢市)で装置メンテナンスなどに従事していた38歳(当時)男性が2017年1月に急性心筋梗塞で死亡し、米沢労働基準監督署が過労死として労災認定していたことが分かった。
一部報道によると、死亡する直前の4カ月間、男性の時間外労働時間は国が「過労死ライン」とする月平均約80時間に上った。直前1週間の残業時間は25時間に達していたという。工場は24時間稼働で、男性はトラブルがあれば深夜・休日も出勤。膨大な部品取り付け作業のノルマも課され、達成に向けて心身に高負荷がかかる中で作業を続けた結果、過労死につながったという。
15年末に電通で新入社員が過労自殺した事件以来、長時間労働の危険性がこれほど世間で騒がれているにもかかわらず、また痛ましい事件が繰り返されてしまった。
今回のケースも、男性1人に膨大な業務が集中し、深夜や休日にわたる長時間労働が続いていたことから、会社側の労務管理が至らなかったことは明白だ。報道に対して親会社のルネサス エレクトロニクスは「再発防止に向け、誠実に対応する」とコメントしているようだが、その言葉通り深く反省し、従業員が疲労・ストレスをためないようにノルマ設定や勤務形態を見直すべきだ。
言うまでもないことだが、過労死の原因は疲労・ストレスの蓄積にある。通常であれば、仕事での疲労は休養・睡眠をとる事で回復できるが、過酷な労働が続き疲労が蓄積すると、睡眠などでは回復できなくなってしまう。この「回復できない疲労の“負債”」がじわじわと積み重なる中、こなしきれない量の仕事や納期といったプレッシャーにさらされると、従業員の脳や心臓は強い負担を受け、過労死を招いてしまうのだ。
このような労働問題が報じられるたびに、ネット上などでは「社員が過労死した企業はなぜ罰せられないのか?」という意見が出てくる。人命が失われた企業には、営業停止などの厳罰が妥当だ――という声は十分に理解できるが、実際は企業に労災補償義務のみ生じるケースがほとんどだ。
遺族が企業を訴えて企業側に安全配慮義務違反などが認められた場合は、債務不履行を理由とする損害賠償を請求できるが、営業免許取り消しなど企業の存続にかかわる処分には及ばない。そもそも、企業を相手取った訴訟を起こすには金銭的負担も大きいため、訴訟に踏み切らず泣き寝入りしてしまう遺族も多いと聞く。
過労死が出た企業は、なぜ厳しく罰せられないのだろうか。その要因は、労働基準法(労基法)の規定にある。
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