労基法では「1日8時間/週40時間」が労働時間の上限だが、労使間で「36協定」を結べば、月45時間までの残業を命じることが可能になる。さらに「特別条項付36協定」を結べば、実質青天井で合法的に残業をさせることができてしまうのだ。
つまり現行の法律上では、企業が月100時間といった過労死レベルの残業を従業員に強いたとしても、事前に法的手続きを取り、労働者代表と協定が締結されていれば「合法」扱いになるのだ。
14年に東京新聞が行った調査によると、当時の最長協定時間は関西電力の「月193時間」。次いで日本たばこ産業(JT)の「180時間」、三菱自動車の「160時間」と続いている。
このような長時間労働の協定を労働者代表が受け入れているのも驚きだが、明らかに過労死ラインを超える協定を「再考すべき」と突き返さずに受理してしまう労基署も問題だ。しかし、労基署の見解は「協定する限度時間は労使自治に委ねられている以上、労基署は受理せざるを得ない」の一本やりである。
また、協定締結などの煩雑な手続きから逃れたい――と考える悪質企業が存在することも事実だ。こうした企業では、会社側が一方的に協定を作成して届け出るケースや、「残業は自己責任だから、45時間以上はタイムカードを押すな」と指示してサービス残業を強制させるケースが存在する。もちろんこうした行為は違法だ。
とはいえ、仮に違法行為が発覚し、企業が労基署から告発・送検・起訴されて有罪となったとしても、そのペナルティーは最大でも「30万円以下の罰金か6カ月未満の懲役」で済んでしまう。企業にとっての「30万円」は大きな負担ではなく、労基法違反の抑止力にはとてもならないだろう。
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