では、気持ちの良い「雇用の流動化」とは何か。同じ釜の飯を食っていた同僚が後腐れなく辞めて、新天地で活躍することである。いわゆる「人材輩出企業」というやつだ。
人材輩出企業ってどこのこと? このように聞かれると、リクルートや、マッキンゼー、P&Gなどを挙げる人が多いのでは。リクルートに関しては「人材“排出”企業」とも「人材“流出”企業」とも呼ばれていて、OBの筆者も大きくうなずくところだ。
マッキンゼーを辞めた人を見ると、起業家や経済評論家もいれば、お笑い芸人もいるという振れ幅だ。P&Gは経営トップ層や、マーケティング関係者に多数の人材を輩出している。最近話題の人物といえば、マクドナルドのV字回復を手掛けた上席執行役員マーケティング本部長足立光氏だ。同氏はP&GのOBである(ちなみに、ゼミの先輩だったりもする)。
このような人材輩出企業のOB・OGには名前が付く。リクルートなら「元リク」だ。一時、雑誌が華僑のように「リ僑」という言葉を仕掛けようとしたが、まったく定着しなかった。P&G出身者は「P&Gマフィア」と呼ばれている。電通を辞めた人は「辞め電」、博報堂を辞めた人は「脱博者」と言われている。ちなみに、元アイティメディアの人は「ヤメティメディア」と呼ばれているそうだ。
筆者が最近、注目している「人材輩出企業」がある。それはジャニーズ事務所と、北海道日本ハムファイターズだ。
ジャニーズ事務所でいえば、人気グループ「関ジャニ∞」のメンバー、渋谷すばるが脱退し、今年12月31日をもって事務所を退所すると発表した。日本ハムファイターズでいえば、二刀流の大谷翔平が海を渡って、大リーグで大活躍している。
渋谷すばるの脱退については、ファンとしては悲しい知らせであり、“すばるロス”が広がりつつある。裏事情は分からないが、ジャニーズ事務所の歴史の中で、最も美しい脱退劇ではないか、と筆者は感じている。一昨年のSMAP解散騒動などは、ファンとしても悲しい出来事であった。その反省を生かしたのかもしれないが、渋谷すばるの脱退・退所に関しては、メンバーの絆や、お互いの夢を応援する姿勢が感じ取れてよかった。
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