東京ミッドタウン日比谷の隣にマダムの聖地があった!繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(1/3 ページ)

» 2018年04月24日 06時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

 今、東京・日比谷は「東京ミッドタウン日比谷」の開業でにぎわっています。世間の関心はこちらに集まっていますが、私が注目しているのは、そのはす向かいにある施設。「日比谷シャンテ」です。ミッドタウンのニュースの陰に隠れて目立ちませんが、実は日比谷シャンテはこの3月に大幅リニューアルし、非常に魅力的かつ独自性のある施設として生まれ変わりました。

 マダムの聖地、日比谷シャンテ。日比谷シャンテの店づくりから、これからの日本の商業施設の方向性を考えてみたいと思います。

30年ぶりに大改装した日比谷シャンテ

 日比谷シャンテを訪れて驚くのは、店内を回遊するほとんどの客層が女性であること。そして年齢層は50〜60代が圧倒的に多いのです。入っているテナントのほとんどは50〜60代のマダム(ファッション業界ではミセスとハイミセスとも呼びます)向けショップばかり。カフェでくつろぐ方々もマダムばかりです。こんな場所が東京にあったのかと同施設を初めて訪れる人は驚くことでしょう。

日比谷シャンテの正面入り口 日比谷シャンテの正面入り口

 日比谷シャンテは今から30年前の1987年に開業した施設です。シャンテ(Chanter)とは、フランス語で“歌う”という意味です。日比谷シャンテは旧日比谷映画劇場・有楽座の跡地に建設された「東宝日比谷ビル」内のショッピングモールというのが正式な位置付けです。

 元々、日比谷シャンテは映画や演劇、宝塚歌劇を好む女性顧客が集まる場所として有名な施設でした。日比谷シャンテから皇居方面に向かうエリアは宝塚劇場、シアタークリエ、帝国劇場、日生劇場、国際フォーラムがあり、名実ともに日本一の劇場街です。ですから日比谷は全国からたくさんの女性たちがそれぞれの娯楽を目当てに集まってくる一大エンタテインメントタウンなのです。

 その日比谷シャンテが開業以来、最大規模となるリニューアルをしました。17年秋から3期に分けてリニューアルを実施し、この3月に完成しました。17年度の日比谷シャンテの売上高は約55億円でしたが、リニューアルにより初年度で60億円を超える売上高を目指しています。

3段階でリニューアル

 今回の大幅リニューアルは、日比谷シャンテと東京宝塚劇場の間の区道(136号)が歩行者専用道路へ生まれ変わることに伴ったものでもあります。第1弾は17年10月。東京宝塚劇場側の外観ファサードを変え、新たなテナント(セオリーリュクス、スワロフスキー、キハチカフェなど)を導入し、おしゃれなマダムをひき付けるデザインにリニューアルしました。

 第2弾は17年12月。地下2階レストランフロアを全面リニューアルしました。東京の有名レストランやチェーン店の中でも比較的リーズナブルな新業態店を誘致して、マダムだけでなく周辺で働くキャリア女性も集め、開店とともににぎわっています。

 そして第3弾が18年3月下旬。 全リニューアルが完成しました。1階の新広場、メインエントランス、新店舗、地下2階の東京メトロとの接続などによって、これまでの少し古臭い日比谷シャンテから、マダムのための新たな聖地である日比谷シャンテへと生まれ変わったのです。私から見ると、同施設のデザインイメージも、導入したテナント構成も、マダムのために考えられた施設になっています。

 今、日本全国に3000を超えるSC(ショッピングセンター)があります。しかしそのほとんどはファミリーや若い人をターゲットにしていて、どこも似たような施設ばかりです。しかし、日比谷シャンテはマダムに特化しています。ここまで客層を絞り込んだ施設はほかに見当たりません。同施設のコンセプトを見ていくと、今後の日本の商業施設のあり方もイメージできます。

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