東京ミッドタウン日比谷の隣にマダムの聖地があった!繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/3 ページ)

» 2018年04月24日 06時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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50代以上の女性が主役の世の中に変わる

 日比谷だからこその店ぞろえであり、宝塚歌劇場や映画館が回りにある日比谷シャンテだからそこまでの店づくりができたのでしょう、という見方ではこれからの日本の商業施設は間違った方向に行きます。日比谷シャンテのような取り組みは、他の商業施設にこそ必要な考え方だと言えます。

 その最大の理由は人口構成の変化です。

2020年の日本の人口構成(出典:国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」より) 2020年の日本の人口構成(出典:国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」より)

 これは20年の日本の年齢別人口構成グラフです。この推計によれば、全女性人口の50.4%が50代以上になるのです。このとき、男性の50代以上は45.5%。女性の50代以上が主役となる時代がすぐそこまできています。

 これまでは20代のキャリアウーマンや、10代の女子高生、女子大生がトレンドを作ってきたのが日本でした。しかしこれからは50代女性がトレンドを作る時代に変わると私は思っています。その分岐点が20年です。

 20年に50代以上女性が過半数になるのと同時に、50代以上女性の社会での存在感、発言力が増し、彼女たちに向けたメディアや情報が増え、消費の主役になるのではないでしょうか。従って、日比谷シャンテのように50〜60代マダムを大切にする店づくりは時流的に見ても正しく、これからますます支持される施設になると思うのです。

 日比谷シャンテは全体で66店舗の都心にしては比較的小規模の商業施設です。5フロアありますが、1フロアの面積が小さいので歩きやすく見て回りやすい。適度に休むスペースがあり、フリーのソファ席には宝塚を思わせるデザインが施されていたりします。

宝塚歌劇を思い起こさせる休憩スペース後ろの壁面デザイン 宝塚歌劇を思い起こさせる休憩スペース後ろの壁面デザイン

 店舗構成、店舗の内外装デザイン、雰囲気など、日比谷シャンテはマダムにとって、とても居心地の良い施設です。マダムにとっての居心地の良さは、実はあらゆる客層にとっても居心地が良いということもここに来ると分かります。

 17年度の日比谷シャンテの来館者数は約300万人だったそうですが、今回のリニューアルと東京ミッドタウン日比谷の開業によって18年度は330万の来館者を目指しています。

 日比谷シャンテの魅力に気付く女性が増えればさらに多くの来館者の集う繁盛施設になるのではないかと思っています。次の時代の商業施設のあり方を日比谷シャンテで学んでください。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

株式会社 船井総合研究所 上席コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。ファッションを専門分野とした流通小売業界のコンサルティングのスペシャリスト。百貨店の営業戦略および全社MD戦略立案、GMSの売場再構築、大手メーカーの新規ブランド開発、SPA型小売業の事業戦略策定、中小専門店の現場支援コンサルティングなどを通じ、各業界で注目を集めるグレートカンパニーを数多く輩出させている。街歩きと店歩きによる消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

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