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» 2018年04月27日 11時47分 公開

物流現場の「救世主」登場:「第二の松下幸之助に」 パナソニック出身のベンチャー社長が15年かけてパワードウェアを作った理由 (2/4)

[中西享,ITmedia]

高齢化する建設現場の切り札に

 建設現場では人手不足に加えて現場作業員の高齢化が急速に進んでいる。一部では外国人労働者を採用することで辛うじて人手が確保できている状況だという。一昨年からは、東日本大震災の復興需要に加えて、東京オリンピック関連、外国人観光客の急増に対応したホテル建設ラッシュなどが重なって、建設業界のマンパワー不足は深刻になっている。

 このため、いまのマンパワーを少しでも効率的に回さなければ、仕事を受注しても納期に間に合わなくなる。しかも作業員の高齢化が進んでいるため重い荷物を繰り返し運ぶなどの重労働は労働災害を招く恐れがある。典型的な例がセメント袋の運搬だ。1袋25キロあるセメント袋はトラックで現場まで運ばれてくる。この後、フォークリフトを使ってセメント袋置き場に降ろすときは良いが、狭いスペースしかない現場では従業員がトラックからセメント袋を担いで置き場まで運ぶ。トラックが到着するたびに、25キロの袋を何度も運ぶ作業は過酷だ。

phot 荷役作業ではかがむ動作が多く、腰を痛める要因になっている(©2018 ATOUN Inc.)

 建設業界では高齢作業員の負担の軽減につながるような作業環境を作る必要に迫られている。10年前ならば代わりの作業員を見つけることができたが、いまは能力のある作業員は引っ張りだこの状況だ。それだけに、パワーアシストスーツなどを導入して重労働をせずに作業効率を上げ、可能な限り長く働いてもらう必要がある。建設現場のロボット化は待ったなしの状況になっている。

 「作業負担の軽減に加えて、将来は作業する人が疲れてきたらロボットが休みをとったほうが良いと教えてくれるなど、個人が最も能力を発揮できる環境をロボットによって作っていきたいです。頑張れば頑張るほど身体を痛めるのが人間ですし、疲れ方は各人によって違います。ロボットが、人間の作業量を把握するのはもちろん、その人の最適な働き方や休み方を教えてくれることで個人に最適化してくれる。ロボットはヒトあっての装置なんです」

物流現場でかがむ際や荷物を持ち上げる時に負担が軽減される

「衣服」のイメージに

 藤本社長は女性の使用も念頭に置き、作業現場でのファッション感覚も意識している。機械のイメージがあるこのパワードウェアを着てもらうために、女性からの声を取り入れて、心理的なハードルができるだけ少なくなるように工夫した。旧モデルでは装置のベルトの取り付けか所が5カ所あったのを3カ所にし、暑苦しいイメージがあったのを改良した。カラーについても、20着ほどまとまればオーダーメイドでベルト部分をカラーにできるという。

 ATOUNの基本戦略は、まずは荷物の運搬など軽作業が多い仕事現場にロボットを使った「パワードウェア」の普及を目指す。その次の段階として、例えば50キロの重量物を片腕で持ち上げられるような重量物に対応した「パワードスーツ」の開発を2025年ごろまでに計画している。

 藤本社長は「今回の製品のような『パワーアシスト』という考え方は、身体の外側を覆うごつごつした『外骨格』ではありません。人間の骨格に合わせたフレームにして衣服のイメージに近づけたい。顧客からの要望もあり、腰の次は腕の動きもアシストできるような製品を開発したい。20年後には、物流や工場の現場でも完全な自立型ロボットが普及すると思われるが、それまでの間はパワードウェアやスーツが活躍する。今の段階では省人化するようなロボットがあっても、実際に現場作業を支えているのは人間です。身体への負担をロボットが軽減してあげることで、人間自体が長く働けるようになるのです。使える分野としては中腰での作業が多い農業にも期待したい」と夢を語る。

 実際に農家からの引き合いもある。重労働の雪かきなど他の用途にも使えるのではないかという意見も社内から出ているという。

ATOUNの福井支社長が雪かきに「モデルY」を使用した際の動画

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