まるで本物 「ディープフェイク」動画の危険性世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2018年05月10日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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偽物を見分ける技術が進化

 そこでディープフェイクへの対策も見られるようになった。例えば、Redditは、ディープフェイクの動画を投稿禁止にした。さらにディープフェイクの動画がアップされた米大手ポルノサイト「Pornhub」やTwitterも、同様の動画を禁止にすると発表した。

 また米映画俳優組合も懸念を表明し、米議会議員たちもその危険性に警鐘を鳴らし始めている。

 さらなる対策に動き出そうとしている人たちもいる。米国では今、研究者たちがすでにこのテクノロジーの研究を始めている。その目的は、フェイク動画をフェイクであると的確に見分けるための技術を開発するためだ。さもないと真実とフェイクの境界がこれまでになく曖昧になってしまうからだ。

 例えばドイツのミュンヘン工科大学では、自ら偽の映像を作ることで、本物と偽物の動画を識別する技術の研究を進めている。そこで登場するフェイク動画も、そのクオリティーの高さに驚かされる(こちらからその動画を見ることができる)。この研究では、「ディープフェイク」動画を自分たちで作り、オリジナルの映像と合わせて大量のフェイク動画データをコンピュータに蓄積し、ディープラーニングさせてアルゴリズムで本物と偽物を識別できるようにするという。将来的には、Webブラウザのプラグインなどとしてこの技術を活用する方針だ。

 またDARPA(米国防高等研究事業局)はすでに、「メディア・フォレンジック(MediFor)」というプログラムで、世界中から技術者を集め、自動的に動画や静止画などが本物か、作られたものかを判断する技術の開発を進めている。

 まだ日本では確認されていないこのディープフェイク。今後、技術が今以上に進歩すれば、フェイク動画の問題は世界中で取り沙汰されることになるし、当然日本にも波及するだろう。

 日本でも、今から対策に動き出した方がよさそうだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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