「相続人が被相続人の遺したデジタル資産が分からない」ということは、「相続財産の全てを把握できない」ということです。
結果、遺産分割協議が進まず、相続税申告が難航することになります。
全容が把握できないとしても、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告しなくてはならないことには変わりがないので、全容把握に全力を尽くしたうえでやむなく遺産分割協議及びおよび相続税の申告を行わなくてはなりません。
この時点で相続人に経済的・労力的・精神的な負担を負わせることになります。
また、相続人が被相続人のデジタル資産の存在を知らず、「把握している財産=全財産」として遺産分割協議を行い、相続税申告をしたとしても、その後デジタル資産の存在や金額を知った場合には、あらためて遺産分割協議を行い、相続税の修正申告を行わなくてはなりません。
さらに、「負債」も相続の対象となります。
インターネット上でFX(外国為替証拠金取引)を行い、そこで借金をかかえていた場合には、その借金も相続人が引き継がなくてはなりません。
相続放棄は可能ですが、この期限は3カ月以内です。3カ月を過ぎて以後の相続放棄ができないわけではありませんが、裁判を行い、「相当の理由」があると認められた場合に限ります。
「決して容易ではない」のです。
2018年3月、財政金融委員会にて藤巻健史参議院議員が「仮想通貨を相続で受け取った際、パスワードが分からないと実際に引きだせない。それでも相続税は課税されるのか」と質問したところ、国税庁の藤井健志次長は「現時点ではパスワードが分からなくても相続税の課税対象となる」と答えました。
この考え方は他のデジタル資産にも当てはまります。
死はいつ訪れるか分かりません。元気なうちに、あらかじめ紙にデジタル資産の内容やアカウント、パスワードなどを記録し、相続人のために分かりやすくしておくことが必要になってきていると言えます。(鈴木まゆ子)
鈴木まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ」
<保有資格>税理士
copyright (c) "money no tatsujin" All rights reserved.
Special
PR注目記事ランキング