「今年の新人は使えない」「やる気が感じられない」「言ったことができない」「どう教えていいか分からない」――。4月に新卒社員が入社してからはや2カ月。新人研修を終えて現場配属を終えた企業から、こんな悲鳴が聞こえてくる時期になった。
選考では人事に高いポテンシャルを認められたはずの彼らは、なぜ教育担当者や上司にプラスのイメージを与えられないのだろうか。
新入社員の育成ノウハウに詳しい、リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義 主任研究員は「時代環境の変化によって、現代の若者が学生時代に培った経験やスキルと、ビジネス界で求められる能力に大きなギャップが生じているためだ」と指摘する。
桑原氏によると、新人が育った2000年代の教育機関では、体罰やパワハラが規制され始め、厳しく叱られながら成長する機会が大きく減少した。その影響で、いやなことを我慢しながら何かに取り組み、意味を見いだす経験をした人が減っているという。
国の経済的成長や少子高齢化も、若者の価値観に影響を与えたという。「若者は自ら主体的に動かなくても、欲しいものを与えてもらえる時代になった。就職活動も売り手市場で、他人との競争を強いられることも減ったため、『自分は自分でいい』と考える人も多くなった」と桑原氏は分析する。
そのため、上司から叱られて自分に足りないスキルに気づいたり、自分から周囲に働きかけてアドバイスを得たり、やりたくない仕事を我慢しながら取り組んだり――といった、仕事で必要なスキルがうまく育っていないまま社会に出てしまうというのだ。
一方、古いスタイルの教育制度や風土のもとで育った上司や先輩は、給食を残すと休み時間を使って食べさせられたり、悪いことをすると廊下に立たされたり、ゼロから遊びを考え出したり――といった経験をしている。その中で、「上の指示には従う」「理由がなくても、取りあえずやってみる」などの行動パターンが体に染みついている。
こうした違いがあるため、上司・先輩が頭ごなしに「指示に従ってほしい」「言った通りに働いてほしい」と指示しても、新人は「なぜそんなことをする必要があるのか」「自分のやりたい仕事じゃない」――と感じてしまうという。
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