ジェフ・ベゾスはなぜ月を目指すのか?宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2018年06月18日 06時15分 公開
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政府に頼らずともやり切る

 月に関しては、NASA(米航空宇宙局)をはじめとする各国政府系宇宙機関も目指している。17年2月に発表された米政府の予算教書では「Lunar Orbital Platform-Gateway」に予算が付き、月周回軌道上に居住基地を設置、同居住区は研究目的や商業組織による月探査などにも使われるとともに、将来的には火星探査のための中継基地として使われる想定だ。

月での恒久的拠点の建設を目指す 月での恒久的拠点の建設を目指す(出典:公式サイト

 従来はこうした国家主導のプロジェクトに民間企業が参加するのが通常であったが、Blue Originのスタンスは特徴的だ。先述の着陸船Blue MoonをNASAとの官民パートナシップで開発することを提案しているが、「NASAが行わなくても自分たちでやる」と主張するなど独自姿勢が強い。

 NASA側のスタンスはまだ不透明だ。小型の着陸船に関しては4月にCommercial Lunar Payload Servicesと呼ばれる月までの商業輸送サービスに関するRFP(提案依頼書)が民間企業に対して開示されており、今後10年間で複数の契約を締結する意向だ。他方で、中型や大型の着陸船に関しては特に示されていない。

 他方で、Blue Originは他国政府と話す準備も進めている。オーストラリアでは、今後の宇宙産業の拡大を見据えて今年7月から新たに宇宙機関を創設することが決まっており、今後の4年間に約4000万豪ドル(約33億2600万円)を拠出する。このオーストラリア政府に対して、同社は月の恒久的拠点建設プロジェクトに関して話す準備ができているという。このようにさまざまな活動を進めるベゾス氏とBlue Originの今後の動向を注目したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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