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» 2018年06月21日 07時00分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:日本人が知らない「ゴッドファーザー」の世界 末裔が語る“マフィアの掟” (4/4)

[山田敏弘,ITmedia]
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マフィアは今も暗躍している

 ただこうしたマフィア話も「そもそもいまどき、イタリアのマフィアやその末裔なんて言われても、しょせんは昔の話だろう」と思ってしまう人も残念ながらいるかもしれない。もしかしたら、茅場町の「ウ・パドリーノ」を貸切りにした麻生氏もそんなノリだったのかもしれない。

 だがそれは正しくない。実は現在も、マフィアは世界で恐ろしく暗躍している。例えば、近年話題になっているのは、イタリア半島南部カラブリア州を拠点にするマフィア「ンドランゲタ」だ。カラブリア州とは、イタリア半島の「つま先」部分になる。

 ンドランゲタは近年、世界の警察当局などが注目している組織だ。ンドランゲタは、イタリアのシチリア島のマフィアともつながっており、500万〜1000万ドルほどを稼ぎだしているといわれる。欧州の麻薬の7割はこの組織が関与しており、事実2013年には、欧州刑事警察機構(ユーロポール)が「世界で最も稼ぎ、最もパワフルな組織犯罪グループ」と名指ししている。

 ンドランゲタの成り立ちはこうだ。もともとは裕福なイタリア人を誘拐するなどして金を集め、そこからコカインなどの麻薬を取り扱って強力な犯罪組織となった。その支配は米国やアジア、オーストラリアなど世界に広がっており、世界的に問題視されている。

 マフィアの中にいる女性についての書籍『THE GOOD MOTHERS』(未翻訳)を6月に上梓したばかりの元雑誌記者アレックス・ペリー氏は、「今マフィアは、これまでになくパワフルになっている」と、米メディアのインタビューに語っている。さらにペリー氏は、ンドランゲタが金融界にも食い込んでおり、各地の大きな犯罪組織ですら、ンドランゲタにマネーロンダリングを依頼しているほどと指摘、そんな実態から、「ンドランゲタが扱っているのは世界で数千億ドルにもなる」と述べている。

 とにかく、マフィアは今も世界で暗躍しているのだ。

 そんなマフィアの文化を見てきた末裔が日本でイタリア料理店をやっているというのだから、麻生氏でなくとも興味を持つ人は少なくないだろう。

 ただルチアーノ氏は『破界』の中でこう書いている。「映画『ゴッドファーザー』が名作だったこともあり、日本では『マフィア』が大きく誤解されている印象だ」

 マフィアは決して、映画のような「かっこいい」だけの存在ではない。ぜひ麻生氏にも『破界』を読み込んで、それを感じてもらいたいものだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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