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働き方改革関連法の成立で仕事はどう変わるか?“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2018年07月05日 06時30分 公開
[加谷珪一ITmedia]

どこまでが高度プロフェッショナル?

 高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上の高度なスキルを持つ社員を、労働時間の規制対象から外すもので、一般的には、研究職やコンサルタント、アナリストなど、年収が高く、かつ専門性の高い職種が該当するとされている。

 この制度に対しては、柔軟な働き方が可能になると評価する声がある一方、一部の専門家は、多くの人材がなし崩し的に高度プロフェッショナル社員に認定される可能性があり、実質的な給与削減策になるとして批判している。

高度プロフェッショナル制度については、さまざまな議論が沸き起こっている(出典:厚労省サイト) 高度プロフェッショナル制度については、さまざまな議論が沸き起こっている(出典:厚労省サイト)

 この制度を導入するためには、労働側と企業が合意し、対象者本人も適用に同意することが条件となっている。また、実際に制度を運用する場合には、年間104日の休日取得が義務付けられるので、すぐに無制限の残業拡大につながることはないだろう。

 だが適用対象となる職種について明確に定まっているわけではなく、中長期的にはさまざまな職種が適用対象となる可能性は残されている。経団連の榊原定征前会長は記者会見で高度プロフェッショナルの適用職種の例として、研究開発に加えてマーケティングを挙げている。

 日本企業の場合、欧米とは異なりマーケティングという職種が確立しておらず、営業部門の一部がマーケティング業務を行っているケースもある(営業とマーケティングは本来、全く異なる職種だが)。対象職種が営業部門にも広がってくると、事実上の賃金抑制策に近づいてくる。

 また1075万円という金額についても注意が必要である。大企業の場合、通勤手当の上限が高く、遠距離からの新幹線通勤が可能な場合がある。厚労省では高度プロフェッショナル制度の対象となる年収の中に、通勤手当も含まれるとの見解を示している。実質的な年収は低くても、新幹線通勤をしている人は対象となってしまうかもしれない。

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