お店のミライ

セブンが「100円生ビール」を中止した、2つの心当たりスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2018年07月24日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「コンビニ前喫煙」と「現場の疲弊」という2つの課題

 「100円生ビール」のニュースを耳にしたとき、筆者は企業リスクをなりわいとしているので、真っ先に頭に浮かんだのは、セブンの店員と客が、こんな激しい言い争いをする光景だ。

 「お前ら、何度言えば分かるんだよ、他人の迷惑だから、店の前でたばこ吸うなって言ってんだろ!」

 「なんだコラ! ビールとたばこを売ってる店の人間が、お客様によくそんなナメた口がきけんな。責任者出せよ!」

 「うるせえ、オレがオーナーだ! お前らに売るビールはねえ! ってか、オレだってもともとビールなんか出したくなかったんだよ!」

 詳しくはググっていただきたいが、セブンのオーナーはドミナント戦略や厳しいノルマに追い立てられて疲弊している方が多いといわれ、実際に本部と訴訟を行っている方もいる。

 店員がやる仕事も昔のようにレジ打ちや棚卸しだけではなく、コーヒーメーカーのメンテナンス、お惣菜の調理、弁当のお届けサービス、宅急便や通販のコンビニ受け取りの対応など雪だるま式に増えている。そこに加えて、いわば簡易立ち飲み場の管理監督までしなくてはいけないとなれば、コンビニバイトと居酒屋バイトを掛け持ちして、時給は1箇所しかもらえないというようなものなので当然、「ブラック批判」ももちあがる。

 個人的には「100円生ビール」は楽しみだし、ぜひ再チャレンジしていただきたい。が、一方で、「コンビニ前喫煙」と「現場の疲弊」という2つの問題を抱えるこの組織にとって、軽い気持ちで手を出すと大怪我するものだとも思う。

 昔から「酒は百薬の長」といわれるが、セブンにとっては薬どころか、身を破滅させる「狂い水」だったということか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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