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パイロット1人制か、航空機「コックピット改革」の是非人材不足も背景(3/4 ページ)

» 2018年07月24日 11時41分 公開
[ロイター]

<脆弱性の増大>

例えば、長距離フライトの巡航で、1人のパイロットが休憩に入り、操縦室に1人しか残っていない場合、疲労が増大し、飛行中に発生する想定外の事象に対する脆弱性が増してしまうと、ロイターが取材した3人のパイロットは語り、2009年に発生したエールフランス447便の墜落事故を例に挙げた。

このとき、乗員乗客228人を乗せたエアバス330型機には、3人のパイロットが搭乗していたが、高高度からの失速から機体を回復できなかった。事故発生時には、経験の浅い2人のパイロットが操縦を担当しており、休憩していた機長が戻って対応したが、手遅れだった。

「彼らが直面した事態をシミュレーションで体験した。何が起きようとしているか、分かってはいても、非常に当惑した」とカンタス航空のパイロット組合を率いるマレー・バット委員長は語る。「あの真夜中に、飛行経験の浅い2人のパイロットがどんな気持ちだったか、想像もできない」

他に懸念されるシナリオとしては、2015年に発生した格安航空会社ジャーマンウィングスの事故のように、パイロットの1人による故意の墜落事故、また1人しかいないパイロットが航行中に健康問題を起こすリスクなどが挙げられる。

パイロット1人制への移行は、訓練面でも難題だと、オーストラリアの民間航空機パイロットで航空分野の研究者でもあるスチュアート・ベバリッジ氏は語る。副操縦士の役割は、機長としての責任を担う前の見習いとしてのステップと考えられているからだ。

また乗員数を絞ることによる財務メリットも、限定的な可能性がある、と指摘するのは航空コンサルタントのジェームス・ハルステッド氏だ。航空会社が得るコスト削減の恩恵は、運賃の値下げという形で乗客に還元される可能性が高いからだという。

「長距離路線においては、燃料費や設備投資に必要とする資本コストに比べれば、乗組員の人件費が占める部分は小さい」とハルステッド氏は言う。「パイロット1人分の給与を節約しても、吹き飛んでしまう」

航空会社の利用者も警戒の色を隠さない。UBSのアンケート調査によれば、パイロットが1人で操縦するジェット機に乗っても構わないという回答は全体のわずか13%だった。

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