ヤマトHD、引っ越し子会社が計17億円の不適切請求 チェック体制に不備見積もり額のまま請求

» 2018年07月24日 19時36分 公開
[ITmedia]

 ヤマトホールディングス(HD)は7月24日、引っ越し子会社のヤマトホームコンビニエンス(YHC、東京都中央区)が法人顧客2640社に対し、過去2年間で計約4万8000件・総額17億円の不適切請求を行っていたことが分かったと発表した。YHCは引っ越しの見積もりを作成後、家財の増減などを踏まえて請求額を修正する規則を設けていたが、これが機能しておらず、当初の見積もりのまま、本来よりも多い金額を請求するケースが多発していたという。

 被害があった顧客企業への報告と謝罪は済んでおり、今後は返金を進めていく予定としている。

photo ヤマトホームコンビニエンスの公式Webサイト

チェックの機能不全が原因

 ヤマトHDは不正が起きた原因を「実作業に即した金額をご請求するという基本ルールが全社に周知徹底できていなかったことや、規則を順守するための作業フローとチェック機能に大きな不備があったことによる」と説明する。

 個人向けの引っ越しサービスはチェック体制が整っているため、同様の事態が起きている可能性は極めて低いという。

photo 不適切請求の実態(=ヤマトHDの報道発表資料より)

メディアの指摘で発覚

 不正発覚の経緯は「6月25日午後に、YHCの顧客企業などを取材しているメディアの記者から『不適切請求に関する事実確認がしたい』との問い合わせがあり、精査した結果、実際に不正があったことが分かった」(広報担当者)という。

 その後は7月5〜16日にかけて、2016年5月1日〜18年6月30日に引っ越しを行った3367社・約12万4000件の作業データを約500人の体制で分析し、不正の実態を把握したとしている。「公表が遅れた要因は、一連の調査に時間を要したため」という。

photo 不適切請求が起きた要因(=ヤマトHDの報道発表資料より)

再発防止策を始めている

 再発防止に向け、6月28日から業務体制を変更。(1)引っ越し前にYHCの担当者が顧客企業を訪問し、契約内容を共有する、(2)引っ越し終了後、作業結果を顧客企業に共有する、(3)実作業の金額と見積もりに差があった場合は、実作業に即した金額を請求する、(4)以上のプロセスの運用をYHC本社がチェックする――などを実行しているという。

 上記以外の再発防止策を企画・立案する社内機関「事業構造改革推進室」も設けており、社員教育やルールの再構築などを手掛けていくという。

photo 不適切請求の再発防止策(=ヤマトHDの報道発表資料より)

調査委員会を設置 処分は未定

 7月23日には外部有識者から構成される調査委員会を設置済み。「事業構造改革推進室」が策定した再発防止策の有用性を判断するほか、事実関係の調査と原因の究明を担っていく方針だ。

 不適切請求を巡る処分などは、現時点は未定。ヤマトHDは「経営の責任を明確にするため、調査委員会の調査結果を受け、処分を決定する。処分内容は改めて報告する」としている。

photo 今後の対応(=ヤマトHDの報道発表資料より)

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