発売から1年「折れても元通りになる雨傘」は売れている? 製造元に聞いてみた「郵便局」で売り始めたワケは(2/3 ページ)

» 2018年07月31日 13時43分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

子ども用の傘の売り上げ増が課題

 好調の「折れても元通りになる雨傘」だが、課題も出てきている。

 「小さな子どもの安全を守りたい」との思いから今年2月に発売した子ども向け商品「ポキッと折れるんです KIDS」(税込1620円)は、大人向けほどの売り上げと認知度を得られていないという。金子さんによると、その要因はサイズだ。

 「子ども向け商品のサイズは55センチ。小学校低学年にはぴったりだが、幼稚園児には大きすぎ、小学校高学年にはやや小さいため、ターゲットが狭い点は否めない。だが、折れても元通りになる仕組みを維持しつつ、小型化するにはこのサイズが限界。これ以上小さくすると、普通の傘と同じく折れてしまう」

photo 「ポキッと折れるんです KIDS」

 サイズ変更は難しいため、スペックは現状のまま、マーケティングへの注力によって販売増を目指す。ただ、子ども用の傘は現在も郵便局が主要な販売先。東急ハンズの一部店舗で取り扱いがあるものの、家電量販店などへの展開はできておらず、販路拡大も課題の一つだ。

 店舗では子どもが自ら買うケースはまれで、郵便局などに立ち寄った保護者が「面白そう」と手に取って購入するケースが大半だといい、「子ども用の傘には、前が見える透明のビニール窓や、ぶつかってもけがにつながりにくい丸い先端パーツなどを採用している。こうした安全性の高さをもっと訴求していきたい」としている。

photo 安全性の高さも魅力だ

ブランドイメージの浸透も課題

 また、大人用の傘そのものは人気が出ている一方で、当初の目的だった「石けん以外でもお客さまの肌を守りたい」とのブランドイメージの浸透は「まだまだ進んでいない」という。

 当初はブランドイメージの向上により、通販で培った顧客基盤を生かし、既存顧客に傘を買ってもらうことも視野に入れていた。

 「石けんはリピート率が高く、使い切ると再度注文をいただくことでビジネスが成立している」が、「『ポキッと折れるんです』は『壊れないこと』、つまり『リピートせずに使い続けられること』が魅力の製品。両者の特性は異なるという考えに至った」という。既存顧客に対する傘のマーケティングは今後の課題だ。

photo 既存顧客に対する傘のマーケティングが課題だ

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