土肥: 高橋さんは昆虫食の研究を始めて、今年で4年目。これからはどんなことに取り組んでいくつもりですか?
高橋: 3年後に、これまでになかった栄養素を見つけることができた、といったことはあまり興味がありません。10年後……いや、20年後、30年後になるかもしれませんが、私たちの食文化に昆虫が根付いていて、スーパーで○○虫が売っている、レストランに○○虫のメニューがある、といった未来を考えるほうがおもしろい。
話はちょっとそれますが、僕は昔に書かれたSFが好きなんですよね。本を読んでいて、当時の人はよくこんなことを考えていたなあ、いまでも使えるモノがあるなあと感じる。その一方で、それは無理でしょといったモノもある。例えば、空飛ぶ自動車とか。
じゃあ、昆虫食の未来はどうなっているのか。当たり前のように虫の部位が分けられているかもしれませんし、製造されているかもしれません。いま自分がやっていることを書籍『昆虫(食)記』に残しているのですが、それを読んだ未来の人はどう感じるのか。使える部分があるかもしれませんし、全く使えないかもしれません。予見的な読み物として、楽しんでもらえばなあと。
土肥: 最後に、質問を2つ。高橋さんはこれまでたくさんの虫を食べてきたわけですが、お腹が痛くなったことは?
高橋: いえ、ないです。だからといって、虫を食べているから元気ですとも言えません(苦笑)。
土肥: 虫を飼育して、調理して、食べて――。ああでもないこうでもないと言いながら、さまざまな実験を繰り返してきたわけですが、大の虫嫌いは克服したのでしょうか?
高橋: 残念ながらまだ苦手でして、動いていたらつかむことができません(涙)。ただ、調理すること、食べることへの抵抗感はほとんどなくなりました。実験を始めた当初は、食材になっていても「やっぱり虫は虫だな」と感じていたのですが、いまは食材のひとつとしか思わなくなりました。
土肥: コオロギを食べる、ハチの幼虫を食べる、といったことを想像するだけで体が震えてしまうワタシはまだまだ修行が足りませんね。本日はありがとうございました。
(終わり)
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