コオロギを食べ続けて、どんなことが分かってきたのか水曜インタビュー劇場(昆虫食劇場)(2/7 ページ)

» 2018年08月08日 08時08分 公開
[土肥義則ITmedia]

虫を触れないので、プロダクトをつくる

土肥: 高橋さんは昆虫を食材にできないかと考えていて、これまでさまざまな虫を使ってレシピを開発してきたんですよね。セミやバッタを見るのもダメ、触るのは絶対にダメという人にとっては、虫をわざわざ料理するなんて考えられないと思うんですよね。そもそもどういったきっかけで、昆虫を食材にしようと考えたのでしょうか?

高橋: 大学生のときに卒業制作に取り組まなければいけませんでした。当時の自分は「何かに取り組んで、1年後にアウトプットが想像できないものがいいなあ」と漠然と考えていました。そんなときに教授から「昆虫食はどうかな?」と言われたのですが、僕は虫が大の苦手。生きている虫で触れるのはアリだけなのですが、「研究してみてどんな結果が出るんだろう?」といった興味がわきました。

 「昆虫食を研究する」と聞けば、食料問題に関心があって、ゲテモノが好きで、といった人を想像するかもしれませんが、僕はそうしたことに注目していなくて、「虫をどのようにしたらおいしくすることができるのだろう?」といった興味しかなかったんですよね。ちょっと調べたところ、昆虫食については分かっていないことがたくさんありました。食としても考えられるし、生物学としても考えられるし、アートとしても考えられる。いろんなアプローチができるので、それをどのようにして展開することができるのか、自分なりに模索できればなあと考えていました。

土肥: 入口は学問だったわけですが、研究を重ねていくうちに何かが見えてくるかもしれない。そうした考えだったようですが、ここでひとつ疑問があります。大の昆虫嫌いなのに、研究はどのように行ったのでしょうか。見るだけでなく、触ることも必要ですし、殺すことも必要になります。

高橋: 虫を触ることができませんので、手に触れなくても研究ができるようにプロダクトをつくりました。80センチほどの円筒をつくって、そのなかでコオロギを養殖できるようにしました。コオロギを養殖する際、卵のパックを使う人がいるのですが、それを使うとフンがたまりやすくなる。衛生的にあまりよくないので、円筒のなかに幾何学状のモノを入れて、そこでコオロギを育てました。そうすると、フンをしても下に落ちる、エサを食べ残しても下に落ちる。衛生的にとてもいいことが分かってきました。

食用のコオロギを飼育するためのプロダクト。現在、慶應義塾大学オオニシ研究室にてブラッシュアップ、およびオープンソース化が進められている

 とはいえ、簡単に育ってくれません。コオロギが一カ所に集まったり、汚染が始まったり。なぜそうしたことが起きるのか、原因がよく分からないんですよね。人間の場合、ここが嫌とか、あれが嫌とか言ってくれますが、虫は何も語ってくれません。嫌なことは態度で示してくるので、それを観察しなければいけません。とにかく観察して、何か異変があれば、対応するといった感じ。汚染などの問題については、幾何構造のモノをたくさん入れることで解決することができました。

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