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「非正規社員の待遇改善」の手順は? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説法改正後の均等・均衡待遇を踏まえて(1/3 ページ)

» 2018年08月16日 08時30分 公開
[高仲幸雄ITmedia]

「働き方改革」の用語解説

働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「非正規社員の待遇改善」と、その具体的な手順を取り上げます。


 第5回目の用語解説では、「同一労働同一賃金」に関する法改正(関連記事)を概説しました。今回はこの法改正を踏まえ、今後の「非正規社員の待遇見直し」に向けた手順を解説します。

photo 同一労働同一賃金に向けて「非正規社員の待遇改善」が必須となる(写真提供:ゲッティイメージズ)

1.まずは現状の待遇差の整理(現状確認)を!

 非正規社員と一口(ひとくち)にいっても、有期契約労働者もいればパートタイム労働者もいます。他方で、契約期間の定めのない社員(無期契約労働者)も、通常の正社員もいれば、勤務地や職種を限定した限定正社員、労働契約法18条による無期転換社員もいます。そのため、雇用形態の分類として、正社員、非正規社員という大きなくくりでは不十分で、雇用形態ごとに細かく見る必要があります。雇用形態ごとに整理する作業では、就業規則やその他の規程類と実態の整合性をきちんと確認してください。就業規則の整備が不十分で、規定と運用が一致していないケースも少なくないからです。

 次に、雇用形態ごとの労働条件や待遇差でも、年収ベースといったざっくりとした比較ではなく、(1)基本給、(2)各種手当、(3)賞与、(4)退職金、(5)福利厚生・休職制度・教育訓練など、労働条件・待遇ごとに整理してください。

 長澤運輸事件(編集部注:定年退職後に嘱託社員として再雇用された運転手が、正社員のころと全く同じ業務をしているにもかかわらず賃下げするのは違法だと提訴した事件)における最高裁判決(2018年6月1日)も、「個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当」とし、労働条件ごとに不合理性を判断する立場をとっており、改正法である「パートタイム・有期雇用労働法」の第8条でも、以下のように明文化されています(太字参照)。

第8条(不合理な待遇の禁止)

 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下、「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない

photo 長澤運輸事件の最高裁判例(裁判所のWebサイトより)
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