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「勤務間インターバル」とは? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説必須キーワードを識者が解説(1/3 ページ)

» 2018年07月31日 08時30分 公開
[高仲幸雄ITmedia]

「働き方改革」の用語解説

働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「勤務間インターバル」を取り上げます。


 勤務間インターバルは、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するために、勤務終了後(終業後)から次の始業までの間に、一定時間以上の休息時間を設けることをいいます。「インターバル」が日本語で「間隔」を意味する通り、仕事と仕事の間隔をきちんと空けることだと言えば、イメージしやすいかもしれません。2018年7月に変更された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標が掲げられています。

photo 休息時間を確保し、心身の健康を保つ狙いがある(写真提供:ゲッティイメージズ)

(1)勤務間インターバル制度の法制化

 17年3月に定められた「働き方改革実行計画」において、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻との間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課し、制度の普及促進に向けて、政府は労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げる。また、政府は、同制度を導入する中小企業への助成金の活用や好事例の周知を通じて、取り組みを推進する」との目標が掲げられました。

 その後、17年5月に「勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会」が設置され、勤務間インターバル制度の実態把握や導入促進を図るための方策などが検討されました。また、厚生労働省は勤務間インターバル制度を新たに導入する中小企業を対象とした助成金制度も設けました

photo 助成金制度の概要(厚生労働省のWebサイトより)

 そして、18年6月に「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)」が改正され、「勤務間インターバル制度」が定められました。

(事業主等の責務)第2条1項

 事業主は,その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない(太線は筆者)。

 上記規定で「努めなければならない」とあるのは、同規定が「努力義務」であること、つまり企業に「勤務間インターバル制度」の導入を強制するものではないことを意味しています。

 また同月に改正された労働基準法では、新たに時間外労働の上限規制が課せられることになりました。しかし、この規制は月単位・年単位の規制であるため、勤務間インターバル制度の導入によって、労働基準法による時間外労働の上限規制では見えにくい、短期間の集中的な過重労働・健康被害を予防する効果が期待できます。もっとも、勤務間インターバルを設ける場合には、どの範囲の従業員に適用するか、裁量労働制やフレックスタイム制との関係をどうするか、など検討すべき事項は少なくありません。

 また、制度の内容についても、上記の改正労働基準法に基づく新たな「36協定」の様式や、高度プロフェッショナル制度で設ける「健康・福祉の確保措置」を視野に入れる必要があります。話題の制度だからといって、ひな型規定や他社の規則を、安易に自社の就業規則に書き写すと、勤務実態に合わなかったり、社内の他制度と整合しない規定になってしまったりし、トラブルを招きかねませんので注意してください

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