大手総合商社の丸紅による「社内副業」義務化の報道が議論を呼んでいる。世間では、このニュースを「働き方改革」の先進事例として好意的に捉える向きも存在する一方、副業を 「義務化」するという施策にある種の違和感を覚えた人々も多かったようだ。
賛否両論がある本制度の真の狙いはどこにあるのか。丸紅にて人事部長を務める鹿島浩二氏とデジタル・イノベーション部 イノベーション・市場戦略課長の上杉理夫氏に真意を聞いた。
――「社内副業」義務化の報道に対して、世間からの評価が分かれているが、制度の概要を改めて教えていただきたい。
鹿島: 当社がそのような取り組みをするという報道も出ているようだが、当社においては、「社内副業」を「義務化」するような取り組みはしていない。
2018年4月から新しい人事制度を始めており、その中の一つとして「勤務時間の15%を新規事業創出のための時間に充てることを可能とする制度」を開始している。この勤務時間の15%の活用の部分を「通常業務」と対比させた上で「社内副業」と捉えられてしまったのかもしれないが、当社では、「社内副業」という呼び方はしておらず、単に「15%ルール」と呼んでいる。あくまでも15%の時間を充てることができるということで、「義務化」はしていない。
――「社内副業義務化」と呼ばれた制度は新しい人事制度の一部分だということか。そもそも新しい人事制度は何を目的に導入したのか。
鹿島: イノベーションを促進し、新たなビジネスモデルの創出を図るための取り組みだ。「デジタルトランスフォーメーション」に代表されるように、事業環境が大きな転換点を迎える中で、我々がこれまでやってきたビジネスを続けるだけでは、生き残っていけないという危機意識がある。
「商社の枠組みを超える商社」に丸紅がなっていくためには、既存の枠組みを超えなければならないと考えている。そこで、当社では社員約2700人を対象に、「人材」×「仕掛け」×「時間」という柱で、イノベーションを促進するための施策を、この4月からパッケージ化して実施している。
「社内副業義務化」と報道された今回の制度は、このパッケージングの中の「時間」に当たる部分がフォーカスされたものだと考えている。3つの切り口のうち「時間」については「業務改善プロジェクト」と「15%ルール」を設けた。業務改善プロジェクトでは、社内の提出資料の削減など、社内業務を全般的に見直して効率化を進めていく。
一方の「15%ルール」は、社員一人一人が商品軸を超えたイノベーションの創出や創意工夫による業務改善を考え、行動する時間を全社的に確保するための取り組みだ。担当業務にかかわらず、新たな事業や業務プロセスの企画立案に向けた活動に、業務時間の15%を充てられるようにする。「義務化」といった強制するものではなく、社員の裁量に任せるものだ。
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