夏の甲子園に潜む“無限ループ”は「最悪の事態」が起きるまで続くのか赤坂8丁目発 スポーツ246(4/4 ページ)

» 2018年08月17日 12時00分 公開
[臼北信行ITmedia]
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“無限ループ”は続いていく

 やや感情的になり過ぎている感も見受けられたが、これには同情したくなる部分がある。本来なら夏の高校野球で代表校に選ばれれば栄誉をたたえられるはずが、昨今の過剰な“夏の甲子園バッシング”によって、逆に「夏の甲子園代表校=わざわざ自殺行為に走る集団」という非常に迷惑なイメージを植え付けられかねない流れになっているからだ。だから前出のコーチを含めた出場校側は、開催否定派たちやそれに同調する声に心底怒っているのである。

 ぶったたいている人たちはおそらく「何を言っているんだ! 球児は悪くない!」「ばか言うな! 悪いのは暑いさなかで試合を強行させている主催者側の高野連であり、朝日新聞なんだ!」などと反論すると思うが、残念ながら夏の甲子園大会開催の是非を問う主張は、現場で全力プレーに心血を注ぐ球児たちに水を差してしまっているのもまた事実なのだ。

 しかし、そうかと言って、このまま本当に何も手を打たないとなると不測の事態を招く危険性は必然的に高くなる。世界的に見ても、これだけの矛盾を生み出す大会は珍しい。しかしながら「自己責任」という覚悟の下で、灼熱(しゃくねつ)地獄と化す真夏の甲子園に立つ球児たちと背中を押す指導者や家族、そしてそれを美徳として応援するファンが全国に大勢いる以上は、主催者側も支持を得るためにメスを入れにくく、この先も目を見張るような改革はまず望めまい。「不測の事態」つまり「大会期間中の代表校球児の死」という最悪の状況に遭遇するまで、夏の甲子園の“無限ループ”は延々と続いていくだろう。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシア)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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