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» 2018年08月20日 10時00分 公開

成功の種は“原点”にある サントリー「クラフトボス」開発を率いた大塚氏の挑戦【前編】

2017年に発売し、大ヒットしているサントリーのペットボトルコーヒー「クラフトボス」。これまでにない形状とコンセプトの商品で新しい市場を創った。その成功はどこから生まれたのだろうか。責任者として開発を率いた大塚匠氏の仕事を追った。

[PR/ITmedia]
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 「新しいことにチャレンジしよう!」と上司から命じられて頭を抱えているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。そんなときは、そのプロジェクトの“原点”に立ち返ると、新たな視点が生まれるかもしれない。

 2017年のヒット商品といえば、サントリー食品インターナショナルが発売したペットボトルコーヒー「クラフトボス」だ。缶やカップが主流だったコーヒー市場に、透明なラベルを使ったペットボトル、仕事をしながら飲み続けられるすっきりとした味わいといった全く新しいコンセプトを提案。発売から1年で1500万ケース(3億6000万本)を販売する大ヒット商品となった。次々と新商品が出ては消えていく清涼飲料の世界で、新たな市場を創り出すことに成功したのだ。

 責任者としてクラフトボスを市場に送り出したのが、同社ジャパン事業本部 ブランド開発第二事業部 課長の大塚匠氏だ。大塚氏はその開発について、「働く人のことを徹底的に考え抜いた」と振り返る。新しいコンセプトの商品だが、その根底には「BOSS」というブランドの理念が息づいているのだ。その成功までの道筋を追った。

photo 2017年にサントリー食品インターナショナルが発売した「クラフトボス」(写真はブラック)

右肩上がりのメガブランドを背負う責任

 BOSSは1992年に誕生した缶コーヒーの代表的なブランド。2017年には発売25周年を迎えた。この25年、売り上げが前年を下回ったことは一度もないという、強力なブランドだ。

 しかし、コンビニのカウンターやカフェで提供されるコーヒーが増え、入れたての味を手軽に楽しめる商品の幅は広がり、缶コーヒー市場は厳しい状況にある。大塚氏がBOSSを担当することになったのは、そんな危機感のさなかにある14年だった。

photo サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 ブランド開発第二事業部 課長の大塚匠氏

 大塚氏は04年にサントリー(現・サントリービール)に入社後、発泡酒や新ジャンルといったビール系商品を開発。10年からは現在の会社で新規ビジネスを担当し、「新鮮で、面白い、売れるもの」という難しい商品開発に取り組んでいた。失敗もたくさん経験した。

 BOSSのグループリーダーになった14年は、まさにコンビニの100円コーヒーが台頭してきたころ。そのタイミングでの異動に、「会社の利益に貢献していないからだろうか、なんてネガティブなことも思いました」。市場は厳しい状況だが、BOSSは発売から一度も売り上げを落としていない。「この環境変化は、ブランドの成長に陰りを落としてしまう状況だ」。切羽詰まっていた。

 しかし、そういった気持ちだけで動いていたわけではない。BOSSの担当になったことで、缶コーヒーの奥深さにも引き込まれていた。「缶コーヒーは働く人に寄り添い、精神的な支えになっている。愛してくれる人はまだまだたくさんいるのです。だからこそ、市場が厳しくても『何とかしたい』という気持ちを持っていました」

 そんな気持ちで手掛けたのが、14年9月に発売した「PREMIUM BOSS(プレミアムボス)」シリーズだ。BOSS史上「最高峰のコク」を実現するために、「微粉砕コーヒー豆」などの独自製法を開発した。その本格的な味わいが人気となり、商品ラインアップを拡大。今も定番シリーズとして展開している。

 「1年間で発売される新商品は1000種類、そのうち残るのは3つと言われる厳しい業界です。半年、1年かけて開発しても、発売日の1日だけで『売れない』と判断されることも少なくありません。そんな市場で、今も残り続けている。ありがたいことです」

photo 「PREMIUM BOSS(プレミアムボス)」シリーズ

コンセプトとネーミングが決まらない

 クラフトボスの開発は、「若い人たちに飲んでもらいたい」という課題から始まった。コーヒーを手軽に飲める場所が増え、コーヒーの消費量は増えている。しかし、缶コーヒーを20〜30代の若い人に手に取ってもらえない。「これからどうなってしまうのか。危機感がありました」と大塚氏は振り返る。

 若い人たちに好まれる味わいを目指して、「香り高く、飲みやすい」ブラックコーヒーを3年かけて開発。5種類のコーヒー液をブレンドすることで、コクがあるのに後味が苦くない「澄みわたるコク」を表現した。「この味わいの方向性には自信がありました。缶コーヒーの主要ユーザーには好まれないかもしれませんが、全く違う層の人たちを狙っていたからです」。若い世代に一般的なペットボトル容器の採用も、早い段階で決まっていた。

 ところが、思わぬところにハードルがあった。新商品発売を最終決定する3カ月前になっても、「コンセプトとネーミングが決まらない」。味は決まっているのに、なぜこの段階で悩むことになったのだろうか。

 「実際にいろいろなデザインなどを試して、若い人たちにアプローチしたのですが、どうもうまくいかないんですよね。若い人たちの心に届かないと、意味がないのです」

 良い商品であっても、伝え方によって反応は変わる。大塚氏は「若者向け」の難しさを痛感していた。「若い人たちへの需要の開拓を、開発の入り口にしたり、目的化したりすると、必ず壁にぶつかります。好みには多様性があるので、別の切り口のアプローチでインサイトをつかんでいく必要があると感じました」。どう伝えれば届くのか。難しいが、乗り越えなければならない課題だ。

 悩んだ末に立ち返ったのが、25年間変わっていないBOSSの“原点”だった。それは「働く人の相棒」というコンセプト。働く環境や働き方が変わっても、その立ち位置は変わらない。「ブランドの強みや役割に立ち返ったとき、今の時代に働く人たちが抱える課題は何だろうか、という疑問を持ちました。そこを深掘りすれば、何かが見えてくるのではないかと考えたのです」

 今、働いている若い人たちの“深層”に迫る3カ月間が幕を開けた。

後編に続く

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年9月2日