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» 2018年09月03日 10時00分 公開

働く人の“代弁者”になる サントリー「クラフトボス」を大ヒットに導いた、意外な発見【後編】

サントリーの大ヒット商品「クラフトボス」。前編では、商品開発を率いた大塚匠氏の前に立ちはだかった壁について紹介した。「働く人の相棒」というBOSSの価値に立ち返った結果、つくり上げることができた“新しい相棒”。それはどんなものなのだろうか。

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 サントリー食品インターナショナルが2017年に発売したペットボトルコーヒー「クラフトボス」。1年で1500万ケース(3億6000万本)を販売した大ヒット商品だ。前編では、商品開発を率いたジャパン事業本部 ブランド開発第二事業部 課長の大塚匠氏の歩みと、クラフトボスの開発で立ちはだかった壁について紹介した。

 「澄みわたるコク」を目指して完成させた味わいには自信を持っていた。しかし、商品を最終決定する3カ月前になっても、コンセプトとネーミングが決まらない。誕生から25年間変わらない「BOSS」の存在価値に立ち返ることでその逆境を乗り越えようと考えた大塚氏は、どんなことに取り組んだのだろうか。

photo サントリー食品インターナショナル ジャパン事業本部 ブランド開発第二事業部 課長の大塚匠氏

“人の手のぬくもり”という意外な発見

 今の時代に働く若い人たちは何を感じ、何を大事にしているのか。そこにたどり着くためには、まず、その人物像をイメージすることが必要だ。その視点で調査を進めると、缶コーヒーが昔ほど飲まれない状況との関係性も見えてきた。

 「今、さまざまな情報サービスが次々と生まれています。その結果、IT系の仕事で働く人が急激に増えています。そのような中、缶コーヒーをよく飲んでいるのは建設現場や外回りの営業など外で働く人たちですが、彼らと比べてITワーカーは缶コーヒーを飲んでいないことも分かりました」

 なぜ飲まないのか? そして、ITワーカーの心に刺さるものとは何なのか? それを明らかにするため、システムエンジニア(SE)の仕事をしている約40人に話を聞くことにした。

 その結果は、驚きの連続だった。まずは缶コーヒーに対するイメージ。大塚氏は「古臭く見えるのだろうか」と仮説を立てていた。ところが、彼らが実際に口にした言葉から連想するのは「缶詰」。長期保存をするための容器で、入れたてのコーヒーの味ではない。見た目が缶詰に近いプルトップの缶ではなく、ふたができる「ボトル缶」を話題に出しても、「それも缶じゃないですか」「同じですよ」と切り捨てられてしまう。コンビニやカフェのアイスコーヒーなら、中身が見えてフレッシュなイメージがあるという。

 そして、丁寧に話を聞いていくと、彼らが抱えている悩みが見えてきた。「SEの仕事は取引先の企業で作業をすることが多く、同僚とのコミュニケーションが希薄になってしまうようです。また、トラブルなどにスピード感を持って対応することが求められ、疲れを感じているのではないかと思いました」

 さらに、「大事にしているもの」について話を聞いていくと、日々デジタル技術に接しているITワーカーたちの“意外な価値観”に触れることができた。「ガジェットとか、IT関連のものが大事なのではないかと思ったのですが、全く違いました。『おじいさんが使っていた万年筆』『職人が作った革のベルト』『手書きの日記』。仕事でデジタル技術に接する一方、個人的には“手のぬくもり”を感じられるものを大切にしているのです」

 この発見をヒントにして、「BOSSという相棒に、人肌を感じられるような新しい人格を持たせよう」と、考えたネーミングが「クラフトボス」だった。「クラフト」には、「手仕事」「自由な発想」「多様性」といった意味を込めている。パッケージには、フレッシュ感がある透明なラベルを採用した。新しい働き方をする人たちの「新しい相棒」。全て決まったときには、商品の最終決定日まで1カ月を切っていた。

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働く人のリアリティーに迫る

 「『こんなに薄くて軽い味で大丈夫か』と何度も言われました」と振り返る大塚氏。自信を持ってつくり込んだ味わいは、ペットボトルネイティブではない、缶コーヒー世代の上司たちには不評だった。それでも、「若者や女性など、それまでとは違う層の人たちには反応してもらえる、という確信がありました」。だからこそ、心に届くようなコンセプトを突き詰めて考えたのだ。

 それができたのは、チームの力があったからだという。「BOSSのプロジェクトは、部署を超えた“チーム”でやってきた感じがします。BOSSは『働く人の相棒』として、励まし、寄り添い、慰める、という関係性をお客さまと築いていますが、それはプロジェクトチーム内の雰囲気にも反映されています。それぞれのセクションに良い相棒がいて、課題を一緒に解決していくという気持ちをみんなが持っています」

 ターゲット層の人たちにインタビューをするだけでは、働く人の本当の悩みや考え方に迫ることは難しい。“リアリティー”を感じられないからだ。自分たちも同じ「働く人」として、お互いの悩みを打ち明ける会話をすることも、開発に欠かせない要素だった。

 「現実として、『働く』って大変ですよね。楽しいことよりもつらいことが多い。日々、自分たちもそれを感じていることが、お客さまと気持ちのつながりを築くきっかけになったと思います」と大塚氏は振り返る。

 それでも、働く人という“見えない誰か”のことを考えるのは大変だった。しかし、そのつらさを乗り越えたと感じる瞬間があった。それは、働く人たちと会話を深める中で、一人一人の大切にしているものやエピソードに触れたときだ。「その瞬間、彼らの“代弁者”になれるような気がしたのです。若手時代、上司に『お客さまが憑依するぐらいの気持ちでやれ』とよく言われました。当時は理解できなかったのですが、今は実感できます。そうやって悩んで開発した商品を、店頭で手に取ったり、持ち歩いたりしている人を見ると、誰かの“元気”に貢献できた気がして、大きな喜びを感じます」

photo 現在の商品ラインアップ。2018年6月に新しく「ブラウン」が加わった

 働く人たちの価値観や働き方が多様になれば、「相棒」の在り方も多様になるはずだ。ブランドとして築いてきた過去の実績やマーケットの状況にとらわれすぎず、“原点”を見つめ続けた結果がクラフトボスのヒットにつながったと言えるだろう。

 人が「働く」ことはなくならないが、働く人の状況は変化していく。「BOSSが50年、100年と歴史を刻むブランドになるように、変化に対応しながら、働く人のために何ができるのかを考え続けていきたいと考えています」と大塚氏は語る。私たちの働き方とともに、BOSSのブランドもさらに大きな変貌を遂げていくだろう。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2018年9月16日