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ウォルマートの日本撤退から東京一極集中を批判する小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2018年08月22日 07時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

国道16号線を境にマーケットは変わる

 首都圏育ちの筆者は、20年ほど前に転勤で地方生活をするまで、スーパーといえばダイエー、西友、イトーヨーカ堂だと思っていた。地方で食品専門の地場スーパーを利用するようになって、首都圏の消費者はあまり新鮮なものは食べていないことに気付いた。

 特に首都圏の鉄道沿線(業界では一般的には国道16号線を境に内側が鉄道沿線エリアとされる)は、高い地代に守られて他のエリアからの進出が難しい地域であり、ある意味、競争から除外されていると言ってもいい。国道16号の内側と外側では平均的な店舗レベル(鮮度、価格、品揃え、買いやすさ、駐車場など)が全然違う。だからこそ、競争に負けた鉄道系スーパーが逃げ込めるラストリゾートなのだ。こうしたことを、傍証する図があるのでご紹介したい。

 冒頭でも、西友との価格比較で登場したオーケーは、サービス産業生産性協議会が行う「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」という満足度調査で、7年連続トップと消費者に支持されているスーパーであり、勝ち組とされているスーパーのひとつである。かつ、東京出身のスーパーとして、都内にもどんどん出店できるノウハウも持っている数少ない企業だ。

オーケーの店舗網(出典:同社サイト) オーケーの店舗網(出典:同社サイト)

 このオーケーのWebにある店舗検索ページには、「東京・神奈川・埼玉・千葉の人口密集地を包み込む国道16号線の内側を当面の出店予定地域と定め……」という出店方針を明示している。これをあえて意訳すれば、「オーケーは最強クラスのスーパーですが、16号の外側はレベルの高い競合も多く、時には負けてしまうこともあるので後回しにして、スーパーのラストリゾートである16号の内側をブルーオーシャンとして認識、このエリアで圧勝することで成長していきます」という意思表示をしていると個人的に解釈する。

 国道16号線の内側は、スーパーにとってのラストリゾートではあるが、庶民消費者にとってはあまり良い環境ではないということだ。

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