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» 2018年08月22日 07時00分 公開

小売・流通アナリストの視点:ウォルマートの日本撤退から東京一極集中を批判する (4/4)

[中井彰人,ITmedia]
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東京一極集中に歯止めを

 日本の人口減少が進む中、東京周辺では人口増加が続く。下の表は人口増加数の市区町村ランキングの上位20位までを表示しているが、うち19地域は首都圏、さらに14地域が東京特別区である。これらの市町村は当然ながら16号線の内側にある。庶民にとっては新鮮な食材が手に入りにくいこの地域に向かって、今でも人口は流入し続けている。

人口増加数ランキング(市区町村ベース) 人口増加数ランキング(市区町村ベース)

 東京一極集中という状況は当面続いていくだろう。都内のビジネス街では新しいオフィスビルが建てられ続け、見渡せば高いクレーンがここかしこで立っている。そういえば、大手町に集まっている3メガバンクの本店ビルも、全て建て替えが完了したのを思い出した。これからも東京オリンピック前までには、数多くの大型開発案件が次々と完成し、ビジネス機能がさらに集中していくことになる。

 並行して、都内の中心部にはタワーマンション、周辺部にも数多くのマンション開発が進む。通勤に便利で、教育環境も整った東京に、人口や経済の集中が進むのは、ある意味当然なのかもしれないし、経済効果が高いこともよく分かる。ただ、一極集中の将来的課題を忘れてはならない。周期的な地震災害から我々は逃れることはできない。

 世界のマグニチュード6以上の地震のうち、約2割がこの小さい島国、日本で起こっているという事実をご存じであろうか。多分、周期的な巨大地震発生が前提で、かつ全国民の約3分の1が居住する一極集中度をもった大都市圏など、世界中どこにもない。機能面から見れば、さらに集中度は高い。こうした自然災害は不可避であるため、対策は「分散」しかないことは誰にでも分かるが、短期的な経済合理性に乏しいため実現可能性は低い。

 もし日本の「3分の1」以上が震災で壊滅的な被害を受ければ、その復興を支える人的、経済的資源をどこから、どう捻出すればいいのだろう。東京一極集中は必ず将来に禍根を残すことになる。こんなことは多分、首都圏の住民は皆分かっているのだが、考えないようにして暮らしている。

 かつて、モータリゼーションの進展とともに、地方では都市は郊外に拡散し、薄く広い市街地をクルマで暮らすライフスタイルが定着した。しかし、人口減少と高齢化の到来で、こうした暮らし方はモビリティとインフラコストの問題で維持できなくなり、社会的課題となっている。こうなったのは、これまで市街地を郊外へ拡散することを政策的に規制する都市政策がなかったからだ。明確な都市政策なしに、目先の経済効果や税収を基準に運営するとこうなる、という教訓だと言える。

 一極集中にも早急に歯止めをかける明確な都市政策が必要なのだが、オリンピックのお墨付きの下、一極集中促進が進んでいく。地方創生は、地方のためだけではなく、東京都市圏が災害等で壊滅的なダメージを受けたとき、支援してもらえる資源を分散していくことである。地方に頑張れと言う前に、まずは東京一極集中を規制する、という明確な都市政策が必要だろう。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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