ボーイングが挑む新たな宇宙ビジネス宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)

» 2018年09月17日 12時10分 公開

 航空大手米Boeingがベンチャー企業の買収を進めている。それだけではない。宇宙飛行士の宇宙ステーションへの輸送サービス開発や地球規模の衛星インターネット網構築を計画するなど、新たな宇宙ビジネスに積極的に動いているのだ。

ベンチャー投資を積極的に推進

 Boeingは2017年にコーポレートベンチャーキャピタル部門として「Boeing Horizon X」を設立した。有望な技術を有するベンチャー企業に投資して、航空宇宙領域に活用するのが狙いだ。対象領域は自動化システム、3Dプリンタ、エネルギー、データストレージ、次世代素材、AR(拡張現実)、機械学習、極超音速エンジンなど極めて幅広い。

 今年3月に同部門による米国外初の投資案件として話題を集めたのが、豪Myriota社だ。同社は15年に南オーストラリア大学からスピンオフしたベンチャー企業であり、超小型衛星を活用したIoT(モノのインターネット)向けに、低コストのナローバンド通信システムを構築すべく、省電力かつ超小型な送信デバイスと通信技術を開発している。

米BridgeSatに投資。低軌道に中継衛星群を打ち上げることも計画(出典:BridgeSat) 米BridgeSatに投資。低軌道に中継衛星群を打ち上げることも計画(出典:BridgeSat

 さらに9月にはデンバーに拠点を構える米BridgeSatに投資を行った。15年創業の同社は、衛星が取得するデータの増加と無線周波数帯のひっ迫に着目して、衛星と地上の間に光通信システムを適用しようとしている。そのために光通信に対応する地上局と衛星に搭載するターミナルを開発中であり、将来的には低軌道に中継衛星群を打ち上げることも計画している。

新たな領域に適応していく

 並行してBoeing本体も投資を進めている。今年8月には小型衛星ソリューションプロバイダの米Millennium Space Systems社の買収を発表した。Millenniumは01年設立した企業で、50〜6000kgを超える衛星までの開発実績を有しており、安全保障系の政府機関が主要顧客だ。

 このように昨今ベンチャー企業への投資を加速させているBoeingだが、その背景に何があるのだろうか。

 同社は主に大型衛星市場におけるリーディングカンパニーである。他方で衛星市場は近年、小型衛星を中心に、新たなベンチャー企業が多数誕生しており、イノベーションが加速している。民間企業はもちろんのこと、同社の主要顧客である政府系機関も注目をしている。

 実際、Millennium Space Systems社を買収した際にも、自社の既存衛星ラインアップと同社の小型衛星ソリューションを組み合わせることでさまざまな顧客ニーズに対応可能と考えているとのコメントを発表している。このように新しい領域への対応を進めているのだ。そうした動きは衛星分野にとどまらない。

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