富士重工とSUBARUのフォレスター池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2018年09月18日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 7月19日、SUBARUは新型フォレスターを発売した。と書き出すと「なぜ9月も半ばなのに、今それが記事になるのか?」と思う人もいるかもしれない。

 新型フォレスターのパワートレーンは2種類。2.5リッター自然吸気ユニットを載むモデルと、2.0リッターにマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルがある。そのうち後者の「e-BOXER」と名付けられたマイルドハイブリッドモデルがこの9月14日に追加発売になった。

SUBARUの再量販車種であるフォレスターは2つの性格の違うユニットを与えられた SUBARUの再量販車種であるフォレスターは2つの性格の違うユニットを与えられた

 実はすでに先駆けて、SUBARUはプロトタイプモデルによるクローズドコースでの試乗会を行なっている。大柄なSUVをサーキット的な場所でしごき倒すとどうだったかについて過去の記事でも取り上げ、筆者も高く評価した。

フォレスターの「きのことたけのこ」

 スポーツカーでなくとも緊急回避時には高い運動能力を求められることもあり、そんなテストは公道ではできない。その点では有意義なテストだったが、基本に戻れば、何よりもまず普通の道で走ってどうなのかということの方が優先順位は上だろう。

 ここぞという時の性能が高いのは分かったが、日々の生活を共に過ごす相棒として適するクルマなのか、あるいはもう一歩進んで、毎日の生活を少し幸せにしてくれるクルマなのか? 今回は一般公道で行われた試乗会でそこを中心に検分してきた。

発進や停止の多い市街地で見せた違いを検分する 発進や停止の多い市街地で見せた違いを検分する

 まずちょっと気を付けてほしいのは、「2種類のパワートレインが選べる」ということを「パワートレイン以外は同じ条件」と考えてはいけないことだ。2.5とe-BOXERは、クルマの仕立ての方向性が結構違う。それぞれのオーナーが「犬派」と「猫派」、あるいは「きのこの山派」と「たけのこの里派」のように論争できるくらいは違う。つまり乗らずに決めない方が良いということだ。

 そういう違いができたことには、少し理由がある。ハイブリッドユニットを仕立てるに際して、昨今の横置きFFであれば、トランスミッション周りにモーターの物理的な径を大きく取る余地が十分ある。しかし縦置きの水平対向で、大径モーターを使おうとすれば、モーターの厚み分だけ室内空間を侵食するため、そうそう簡単に大径のモーターを使えない。ペダルがセンタートンネルに蹴られてドライビングポジションが崩壊してしまうのだ。

 だからフロントエンジンの水平対向をハイブリッド化しようとすれば、径の小さなモーターを使うしかない。実は直流モーターを使えば小径大トルクにできるのだが、それはそれで制御の荒さや発熱などの別の問題が発生する。

 交流モーターを前提にすれば、径が小さければモーターのトルクは上げにくい。e-BOXERに使われるモーターは65Nm。プリウスの163Nmと比べれば何となくイメージできるだろう。水平対向は基本的にハイブリッド化しにくい素養を持っているのだ。

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