鉄道ではこんな話もある。朝日新聞8月30日付の記事「畑に急病人『救助に向かいます』 快速列車止めた運転士」によると、JR東日本の米坂線のワンマン運転の運転士が、畑で倒れている男性を発見し、列車を停止して救助した。めったにないことだけど、自動運転の列車で同じことができるだろうか。道端で倒れている人が居ても、進路の外であれば、自動運転バスは通過してしまうだろう。
一方、ネットではバス運転手の悲鳴に似た声も見つかる。朝夕に乗客が集中する路線では、日中の閑散時間帯も待機を命じられる。この時間は勤務扱いで、外出や一時帰宅もできない。あるいは、待機を命じられてもその時間帯は就業と見なされず、給与の算定外になるといった話もあった。バスの運転手不足は、人口減少だけではなく、待遇にも理由がありそうだ。人材不足だから自動運転、ではなく、なぜ人材が不足しているのか、その研究と対策のほうが重要な気がする。
公道を走るバスは、普段私がテーマとしている鉄道とは異なる分野である。無知であることも認めなくてはいけない。しかし、鉄道とバスの自動運転を比較すると、バスは実用には程遠い。将来、自動運転バスが走る街と、運転手がバスを走らせる街があったとして、どちらを選ぶか。私は今まで通り、生身の運転手がバスを走らせる街に住み、乗降時に「お願いします」「ありがとう」とあいさつを交わしたい。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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