それからしばらくして、男は山本の家に訪れたが、その時はまたいつもの腰の低い御用聞きになっていた。このあまりの豹変(ひょうへん)ぶりが不思議でならなかった山本は、ある大学教授にその話をしたところ、「これが事大主義すなわち“大に仕える主義”です」としてこんな説明を受けたという。
「御用聞きにとって顧客は“大”でしょう。だからこれに“つかえる”わけです。ただそのとき彼は自分よりも“小”なものに対しては、検査場であなたに対してとったと同じ態度をとっていたはずです。あなたが異常と感じられたのは、自分の立場が一転したからで、その人の方はむしろ事大主義の原則通り一貫しているのです」(同書、P17)
これを受けて、山本は、日本のような「事大主義国」においては、この御用聞きの態度こそが「模範的」であって、「それに進んでと同調せず、茫然としていた私の方が非常識だったのかもしれぬ」と振り返っている。
この事大主義について、先の教授は「戦後の特徴ではなく、戦前から一貫している」と述べているように、これは日本人が100年以上克服できていない「慢性病」だ。よって、平成日本でも現在進行形で続いている。
相撲ジャーナリストや一部相撲ファンにとって、相撲協会は“大”であることに異論はないだろう。ならば、ここに仕える人たちの目には、“大”に進んで同調せず、頑なに「告発状は事実」などと触れ回る貴乃花親方は“小”として映るのは容易に想像できる。
だから、冒頭のベテランジャーナリスト氏は、公共の電波で貴乃花親方を、「プライドが高くて辛抱できないワガママ」とディスることができたのだ。
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