それでも貴乃花親方を叩く人たちをつくりだす「事大主義」という病スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2018年10月02日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

 先日、夕方のニュースをつけていたら、二度見してしまうようなすごい場面に出くわした。

 この日は、貴乃花親方が「電撃引退」を発表したということもあって、スタジオには相撲記者クラブ会友のおじいちゃ……いや、いや、経験豊富なベテランジャーナリストの方がいらっしゃっていた。

 会見のVTRが流れた後、強面のキャスターが、なぜこんなタイミングで引退をするのだと疑問を投げかける。会見では、告発状(貴ノ岩の受けた暴行事件に関して、内閣府に告発状を提出していた)が事実ではないと認めるよう迫られたからだと説明しているが、もっと別の理由があるのでは、みたいな感じで水を向けた。

 すると、ジャーナリスト氏は吐き捨てるようにこんなことをおっしゃったのである。

 「まあ、自尊心の強い人ですからね。一兵卒にはなったけれど結果が出なかった。それが我慢できなかったのでしょう」

 思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。キャスターは「なるほど」と大きくうなずき納得した様子だったが、「印象操作」にもほどがあるからだ。

貴乃花の引退報道に疑問を感じた人も多いのでは? (写真提供:ゲッティイメージズ)

 このやり取りが公共の電波にのって日本全国津々浦々へ流れたら、ピュアな視聴者の多くは、貴乃花親方が引退した本当の理由は、プライドの高さゆえ、「一兵卒」が耐えきれなくなってヘソを曲げたからだと思ってしまう。

 もちろん、親方が「年寄なんてやってられっかよ」と周囲にくだを巻いていた事実があるとかなら分かるが、完全にジャーナリスト氏のフィーリングである。長年、相撲界に貢献してきた功労者が自分自身で語った引退理由を、わずか30分で「全否定」してしまう社会のムードが、なんだか薄ら寒い物を感じる。

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